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― あやり ―
7
***

今夜は眠れなかった。
原因はもちろん、へーかとまひる様の会話のせいだ。

へーかと結婚…。
へーかと結婚…。

あのあと、へーかがアレスを呼んで、アレスからきちんと説明があった。
へーかとの結婚はもうすでに決定事項らしく、その準備を進めているのだと。
まわりはすでにそう認識していたため、むしろ知らなかったのは当事者であるおれだけだったらしい。

伝えわすれていたことを、へーかはどこかすまなさそうにしていた。

もちろん嬉しい気持ちもあったけれど、大部分は悲しい気持ちだった。

だって、おれはへーかのこと好きだけれど、へーかは義務で結婚をするのだ。
それを素直に喜べるわけがない。

結婚相手が猫だなんて、かわいそすぎるよ…。


おれは小さくため息を吐き出すと、へーかが目を覚まさないように起き上がって、
いつかと同じようにバルコニーに出て風に当たった。

手すりに身軽にのぼって空を見上げれば雲一つなく、満月が輝いていた。
こうして、バルコニーに出たのは1月以上も前のことで、そのときはクロさんとシロちゃんが一緒だった。
あのときも悩んでいたときだったっけ?

あれからいろんなことがあったなぁ…。

ぼんやり1か月間を振り返っていると、夜の冷たい風があたり、長い毛が揺れるのが視界に入った。


おれは自分の身体をあらためて見下ろした。

猫だ。
誰がどうみても。

こうして見下ろしても、もう人間だったときの記憶よりも猫の姿での方がしっくりくるのだから、なんとも言えない気持ちになる。

せめて、おれが猫じゃなかったら悩まないのかな?

…いや、人間の姿でもこうして悩んでいたのかもしれない。

だって、人間の姿だからって、へーかがおれのことを好きになってくれるとはかぎらないもん。

おれは男だし、情けないし、よわっちい。
どう考えてもへーかが好きになってくれる要素がなくて、へーかと釣り合わなくて落ち込んだ。

それでも、へーかにとったら、猫より人間が結婚相手の方がマシだよね…?

猫は種族が違う。
おれが神さまという時点で違う気もするけど、やっぱり見た目的に違う。

できることも違う。
人間の姿の方がきっと、できることがたくさんある。

いっそ、狼男みたいに、満月をみたら変身してしまうとかないのだろうか。

…ないよね…。
おれ、この世界にきてから何度か満月みているし。

そんなことを考えながらもう一度ぼんやり月を見上げた。



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あきゅろす。
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