拍手連載:マイソロ2
■ M006 (1/3) ■

■ラルヴァ■

◎主人公視点◎





「最近、忙しくなってきたなぁ・・・」


ザクリ、と最後のキラービーを退治しながら俺は呟いた。
俺が落ちてきた時と比べれば、雲泥の差とも言えるほど依頼は舞い込んできている。
皆も色々な依頼を受けているので、チャットはあちらこちらへと船を移動させるのに大変そうだ。
俺たちが居る粘菌の巣まで戻るのに、まだしばらくかかるはずだ。


「そりゃー、我が国お墨付きのギルドになったわけですから。むしろ忙しくなってくれないと困ります」


俺の言葉に応えたのは、一緒に依頼をこなす為に来たジェイドだ。
他にはルークとガイが居る。ルークは、自分もお世話になっているから、何かしたいと思ったらしい。

親善大使の仕事は自分でやることは少なかったみたいだ。

んで、ルークが来るなら護衛であるガイだって着いてこなければならない、ということでこのメンバーになった。
本当は回復のできるティアも居ればバランスのいいパーティだったのだろうけど、彼女は別のパーティで違うところで依頼をこなしているはずだ。
まぁ、大佐の実力はかなりのものだしガイだって護衛だから「守りながら戦う」という事は得意みたいだった。
ルークも剣をたしなんでいるのか危なげなく魔物を切り捨てている。


「そっか、グランマニエの後ろ盾が出来たんだっけ・・・すごいな、国の力ってのは」

「そうだな、特にグランマニエは大きな国だからなぁ」

「それに、陛下にも人徳があるしな・・・変わった人だとは思うけど」

ガイとルークの言葉に、俺はふ〜んとあいまいに頷く。
グランマニエっていうのはきっといい国なんだろうと言うのが伺い知れた。

「すごい国なんだろうなぁ」

「ふむ、貴方達はそれを分かった上で私達を助けたのだと思っていましたがね」

どこか皮肉気に口を歪めながらジェイドがこちらを見ていた。

あー、そういえばチャットが「名をあげるチャーンス!」とか叫んでいたような気がする。

しかしそれを素直に言って良いものか。ジェイドにはもう、分かっているのだろうけど。

「一体どういうことだ?」

「つまり、俺たちを助けたのは完全な善意ではなくて、見返りがあると踏んだからだろうとジェイドの旦那は言ってるわけだ」

ガイの言葉に、そーなのか!?と驚くルークに、苦笑を返す。

確かに、ただの善意ではなかった。

チャットには思惑があったし、イリアもだいぶ妖しい笑い声をあげていた。
その時の俺には、なんで彼らを助けたら名をあげる事ができるのかーなんて良く分かってなかったけれど。


(チャットの思惑は、見事に当たったわけだ・・・ジェイドの存在は予想外だっただろうけど)


「ただの善意だけで、危険を冒して人助けをする事は難しいですからね。それが小さくても組織であればなおさらです」

くい、と眼鏡を押し上げてジェイドは続ける。

「ですから、貴方達が助けに来たと言った時も一体どんな無茶を要求されるのかと思っていたのですが。案外お人よしな人ばかりだったものですから、こうやってお世話になることを決めたわけです」

「ジェイド、助けてくれたのにソレは酷くないか・・・?」

脱力して、呆れたように呟くルークの後ろでガイはやっぱり苦笑している。
ジェイドはそうですかぁ〜?なんて胡散臭い笑みを浮かべて。


でも。


「ルークに何かあったら、困るから」


俺の呟きに、皆がこちらを振り向く。


「だから、ジェイドはそこまで考えなきゃいけなかったんじゃないのか?」

“やんごとない方”を守るためには、時に非情にも狡猾にもならなければならないのだろう。

「確かにこちらは利用しようとしてたわけだし。チャットなら、たぶん見返りがなくても助けただろうけど」


というか、ルカとかファラなら放って置かない。チャットはそれを止められない。


「あなた、変わってますねぇ」


そう言って笑ったジェイドは、いつもの胡散臭い笑みじゃなくって、すこし呆れたような苦笑だった。



そう、見えたのはきっと気のせいじゃない。





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