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Novel
pukapuka*氷良様より>>相互記念【G*L】
眠り姫に口付けを



せっかくの二人での仕事だったのに、今日の依頼はあまりにも過酷すぎた。
仕事の最中はおろか向かう時でさえ、張り詰めた空気のせいで甘い雰囲気になどなり得るはずもなく、帰りの列車に期待した。
けれど予想通りというか何というか、まああれだ、ルーシィはオレの肩にもたれ掛かる形で眠っている。
嬉しいかと問われれば嬉しいと答えることに違いはないのだが(一緒にいられるだけで幸せだし、寝顔が見られるなんて心臓がおかしくなりそうだ。)、やはり恋人らしいことの一つや二つしたかったというのが本音だ。

「ルーシィさーん?」
「うにゃ…」

うにゃってなんだうにゃって!
これくらいで心臓を鷲掴みにされるんだから、やっぱり寝ててくれて良かったかもしれない。
第一付き合いたてで、まだ二人きりではなかなか間がもたないのも事実だ。
せっかくだからこの機会にオレだけ彼女に対する抗体を持って、大人の余裕?ってやつをルーシィに見せてやるのもいいかもしれない。

よし、思い立ったが吉日。とりあえず具体的に何をしようか。
真っ先に思い付いたのは、ルーシィの魅力に慣れることだった。

ルーシィは同性からも嫉まれる程のかわいさを持っており、異性となれば確実に振り返ってしまうレベル。
そんな彼女に微笑まれでもすれば、長くチームを組んでいるオレですら、うまく動けなくなる。
それほどまでに愛らしく、それほどまでにベタ惚れなのだ。
寝顔を見るだけで、ぎゅうっと心臓が苦しくなるなんて、どんだけだよ、オレ。

「ほんとにかわいいよな…」

ポツリ、呟いた。
絹のような肌はきっと滑らかで、気持ちいいんだろうな。
頬っぺたはきっとふにふにしてるんだろうな。
躊躇する気もなく、指でつついてやると、ふにゃ、と顔が綻んだ。

「柔らけー。子供みてー」

…好きな子にちょっかいを出すオレの方が子供みたいだよな。
意外に冷静な自分に苦笑した。

「にしても、今日は大変だったけど、ルーシィと二人なのは嬉しかったな」

独り言だろうが何だろうが気にしない。今日は馬鹿にする奴らもここにいねえんだ。

「…なんでおまえと好き合えたんだろう。オレには勿体ねえよな」

でも、ま。

「おまえと思いが通じて良かったよ、ルーシィ」

言葉にすると気持ちは存外高まるもので、ただ寝顔を見ているだけの状態から、もっと踏み出したいという欲求が現れた。
今のオレにはブレーキは掛からないし、ブレーキを掛けてくれる奴らもいない。
それなら、

「好きだ」

金色に輝く髪の一房を手にとると、唇を寄せる。
神経は繋がっていないはずなのに、ルーシィの体が微少に動いたような気がした。

「好きすぎて、つらい」

ルーシィの手を口元まで持ち上げて、小さくキス。頬に、髪に、額に、鼻に。
擽ったいと身じろぎするようなルーシィは、それでもまだ瞳は瞑ったままだった。

「ルーシィ、かわいい」

それをいいことに、首もと、腕、そして舞い戻って頬。
さて、そろそろ限界ですかね?

「で?」

甘えさせるような声色を使えば、冷静を装っていた顔には耐えかねたようにポッと色がともり、うう、と呻き声が上がった。

「…お、起きるに起きられなかったわよ」
「それは悪いことで」
「悪いなんて思ってないでしょ」
「まーな」

いつから起きていたのかなんてわからないが、でも早めの段階で意識はあったはず。
それを知った上であえて、愛情を真っ直ぐにぶつけたんだ。

最初の目的は何だったか、そんなの忘れた。
ただ、今はルーシィにすべての想いの丈をそそいで、ルーシィを愛せる幸せを噛み締めたいだけ。

「好きだ」
「わ、わかったから……恥ずかしい、よ」
「ルーシィはオレのこと、好き?」
「さ、さー?どうかしらねー?」

確実に瞳を泳がせて汗を滲ませているルーシィの頭を、あやすようにぽんぽんと叩いてやった。

まあ気持ちをありったけ伝えられただけで満足だ。
いつもはオレが羞恥に負けちまって、情けなくて仕方なくなるから、うん、今日はオレ、頑張ったんじゃねえか?

ルーシィの真っ赤になってる顔も見られたし、十分だろ。


「……グレイ、好き」
「えっ!?」

一瞬耳元を撫でていったそれが事実として自身に認識されるのを待ってくれやせずに、タイミング良く駅に着いた列車から、ルーシィは逃げるようにして降りていった。

座席に張り付けられたように体が硬直していたが、それはルーシィのあっさりとした声によって直ぐさま解かれることになった。

「何してるの、グレイ。早く帰ろ?」
「あーはいはい、今行くよ姫様」

振り回し振り回され、オレたちは気張らずこんな感じでやっていけりゃいいんじゃねーか?
漠然とそう思いつつ、ルーシィを急いで追い掛けた。

とりあえず疲れているだろう姫様の荷物を奪ってみると、空いた方の手と彼女の華奢な手がどちらからともなく引き寄せられ、自然と握り合う。
くるくる回る表情を追っていると、いつの間にか妖精の尻尾。
ギルドに着いた瞬間に囃し立てられたのは、言うまでもない。

冷やかしを一蹴するようにルーシィの額に口付けると、

「何すんのよっ」

ギルド内はどっと笑いに包まれた。

……まったく、真っ赤な顔で怒られても怖くないっつーの。









* * *
わわわ私のグレルーの起源とも言える書きます氷良さんより相互記念いただきましたあああ!
読んだ方はよくわかったでしょうが、氷良さんにしては珍しいへたれグレイ。なのにどうよこの甘さ!徹底した甘さ!少女漫画読んでるみたいでたまりませんでしょ!(自慢げ
ああそっか、人間て砂吐けるんだネじゃりじゃり……みたいなどうしよう私何言ってるのかよくわからない。もうたまらなくてどうしよう!やっぱり氷良さんのグレイが好きなのこの気持ちノンストップ!(壊)
本当に素晴らしいグレルーをありがとうございました!私もこんなグレルー書けるように頑張ります!

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