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Novel
pukapuka*氷良様より誕生日祝い小説>>Secret Rings【R*L】
Secret Rings



最近の癖は、左手の薬指を眺めること。
だがそれは、自室に籠もってプルーを呼び出して、他の聖霊が現れるのを封じて初めて発動するという、条件付きの癖である。
その視線の先には、華奢な指と、そこに不釣り合いなぶかぶかの指輪がちょこんと居座っていた。

「プルー、いつもごめんね。こんなことで呼び出しちゃって」
「プーン?」
「あはは、ありがと。でも、ビックリしちゃったな。プルーがこれを持ってきた時は」
「ププーン」

“これ”と示されたその指輪は、硬度の高そうな透き通った丸い魔水晶がはめ込まれており、光にかざすとあの人の笑みが浮かんでくるような幻覚が頭を過ぎる。

「『なくしちゃった』って少し寂しそうに言ってたことがあったけど、頑張って探すよって言ったらね、『これからは自分の力でルーシィを守れってことだと思うから、これでいいんだよ』なんて弱々しく笑うもんだから、結局まだ、返せないままなんだ。せっかくプルーが見つけてくれたのにね」
「プーン……」
「だけどロキに返せないからといって、あたしにこれをどこかにやることなんかできない。ロキがレオじゃなくロキとして過ごした日々がこの指輪には詰まってるから、あたしにとって大切なもので…きっと、ロキにとっても大切、なんだと思う」
「プーン」

それにね、と軽く頬を桃色に染め上げて、照れたように苦笑を浮かべながら、言葉を紡ぐ。

「ちょっとだけ、夢を見させてもらいたくて。こうしてると、ロキに指輪を貰ったみたいで、なんだか幸せな気持ちになれるんだ」
「……」
「……ずるいよね、あたし」
「そんなことないプーン」
「プルーってば優しいんだか、ら!?」

プルーは人語が話せないはずだったわよね?と、一度ハッピーに騙されかけた時と同様の疑問に頭を侵されるが、それは一瞬にして回答を得ることになった。

「最近呼んでくれないし、プルーばっかりかまってるなって思ったら……ルーシィってばそんなことを思っていてくれたんだね」
「ロ、キ?」
「それに、ハッピーに聞いていた通り、面白い反応が見れた」
「え、いつから?え?」

状況に一人置いてけぼりをくらって、ルーシィは疑問符を頻りに出現させている。
そんな様子にくすりと声を漏らすと、ロキはルーシィの薬指に彼の指を重ねた。

「『なくしちゃったって少し寂しそうに』……ってところら辺からかな? プルーに替わってもらっちゃった」
「……ひええええ、ちょ、今あたしの方見ないで!!」

カタカタと頭の中の情報が追いつき、一気に体中から熱が発された。とりわけ顔はそれが顕著で、恥ずかしさのあまり、思わず目尻に涙まで溜めてしまう始末だ。

「ほ、ほとんど全部じゃない……」
「そういうことになるかな」
「ごめん、忘れてくれていいからね」

数秒の沈黙の後、指輪ごとルーシィの肌を撫で、前の謝罪に返事をすることをせず諫めこともせず、ロキは優しい声色でルーシィを包み込んだ。

「この指輪はルーシィにあげるよ。探してくれてありがとう」
「ロキはいらないの…?」
「僕の思い出を君が大切にしてくれるなら、それ以上の幸せはないと思うんだ」
「でも、」
「指輪を見つめて僕のことを強く想っていてくれたみたいだし?」
「ちょっと…!」

しっとりしつつあった空気を、あっという間に掻き回し、一度は落ち着いた火照りが再びルーシィを悩ませる。
純粋な想いに邪な想い、どちらも他人に聞かせるには恥ずかしさが生まれてしまうもので、それを本人に知られてしまうなど、羞恥の極みだ。

「なんてね。ルーシィが僕のことをロキとしてもレオとしても大切に想ってくれているのが、どうしようもなく嬉しいんだ。だから、貰ってくれないかな?」
「そ、そういうことなら…本当に貰っちゃうよ?」
「うん。でも、それで僕を恋しく想うのはやめてね」
「言われなくてもわかってるわよ!」

ぷん、と背けてしまった顔は、どんな表情をしていたのだろう。
きっと、喜んでいるような拗ねているような、そんな顔なんだろうな。
ロキは小さく吹き出し、愛しくてたまらないと言ったようにルーシィを後ろから抱きしめた。

「だって、くすぐったくなるでしょ? それに、そうやって僕を恋人として思い浮かべるときは、ちゃんと贈ったものでなくちゃ格好が付かないしね」

言い終えるか終えないかのところで、ぶかぶかの指輪を薬指からすっと外すと、それを彼女自身の右手に握らせる。
そうやって空いたその場所には、彼女の華奢な指にぴったりと合ったキラリと光る指輪が、するりと通された。

「大好きなルーシィへ。聖霊としても、恋人としても、これからもよろしくお願いします」
「こ、こちらこそ!」

驚きのあまりのルーシィの素早い受け答えに、お互い笑い合った。
そしてロキは自分の前に優雅に腕を下ろし、お辞儀をするようにして一言。

「じゃあ早速愛を育もうか」
「それとこれとは別ー!!」

言葉とは裏腹に、唇を頬に押しつけてきた彼女の行動とその照れた笑みに、ロキは真っ赤になってへなへなとその場に座り込む。
ルーシィはそれを満足げに見つめて、もう一度指に輝く指輪へと目を落とすと、幸せそうに微笑んだ。











* * *
見て見て!氷良さんよりこーんなすてきな誕生日プレゼントいただいちまったよ!
まさかの不意打ちでこれを見たアタイ、コーヒー噴き出したからね!お店の人に超迷惑かけたからねごめんなさい(ここで言う)!
本当にね、このお話もそうなのですが氷良さんの書かれるお話は毎回私の心臓をがっつりキャッチなんです。そんな氷良さんにプレゼントて……コーヒーも噴き出しますわ。
気持ち悪いくらい氷良さんにも感想を送り付けたのですが、このお話の1番のポイントはめっちゃ王子なロキがプーンプン鳴いてるところだと思います。キリッ
本当に本当にありがとうございました!

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あきゅろす。
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