Novel
Absurd Lovers*ゆーく様より相互記念>>Rumor+【N*L】
Rumor +
『ナツってルーシィのこと好きだよね』
『おお』
『いや、女の子としてさ』
『はあ? 何だそれ』
ふう、と緩い溜息をつくのはロキ。
『いいよね、ナツは。単純で天真爛漫で』
『てん……? 褒めてんのか? つーか女としてとか、よくわからん』
どこまで無邪気なのかと呆気に取られた。
『……天然という名の呪いかな』
『呪いだぁ?』
素っ頓狂な声を上げて、ナツは自分の身体をぺたぺたと確かめるように触る。
何か勘違いしたらしいのを逆手にとって、ロキは笑顔の仮面の下、
『そうだよ。呪いだよ、ナツ』
『マ・マジか!?』
『うん、そのままだとヤバイね』
『つーかいつの間に……。そうか、あの時か? アイツか、くっそ〜〜』
呪詛される心当たりがなくもないらしく、記憶をたぐる仕草で宙を見つめた。
言葉の割には緊迫感のないロキは、緩い笑みを浮かべながら続ける。
『下手すると――死ぬかも』
『何ぃい!? どーすりゃいいんだ!?』
完全に惑乱するのを尻目に、ロキはちらりと時計を顧みた。
ナツは仕事帰りにギルドに寄っている。時刻は21:00を回ったばかり。
『ロキ……?』
『ん? ふふ。シィー、だよ?』
あんぐりと見上げてくるハッピーに目配せすると――悪戯心が伝播したのだろう。顔を伏せて、くふふと笑った。
『いいかい? ナツ』
そんな様子に少しも気付かないナツに向き直って、にっこりと笑顔を作り、
『僕の言うことが聞けるかい?』
『は・早く言え、どーすりゃいい!?』
『これから日付が変わるまで――』
――ルーシィと口利いちゃダメだからね。
「ダメじゃない。あんな悪戯しちゃ」
騒ぎの後の酒場は、普段通りのにぎわいを取り戻していた。
「ナツもルーシィも必死だったわよ?」
「ミラだって、時報係楽しんでたくせに」
「そ・そんなことないわよー」
言いながら、バレたかと苦笑い。
「……だって、悔しいんだ」
「悔しい?」
からんとショットグラスを揺らす。
「好きだって意識もしてないくせにさ」
「んー、確かにまだ無意識みたいね」
ミラジェーンの視界には、普段通りに笑い合う二人と一匹と、大勢の仲間達。
「だから、少しは傍にいられる有難味をわかってもらわないと」
ロキは振り返らない。頬杖をついて、ただグラスの中の氷と戯れるだけ。
「――じゃないと、バカみたい?」
ぴた、と遊戯が止まった。
サングラスの隙間から、表情のない目。しかしそれは一瞬で元の優男のものに戻り、
「うん、……そうだね」
「ロキって案外可愛いのね」
「……意地悪だね。からかわないでよ」
残っていた酒を一気に呷る。
「男の嫉妬なんてみっともないんだから」
「くすくすくす……」
「……笑ったね?」
「え?」
オーバーなくらい眉を下げ、
「僕だって傷つくんだよ?」
「……ふふ。じゃあ、お詫びに一杯おごってあげようかな」
髪を揺らして、くるりとロキに背を向ける。棚に並んだ瓶を流し見ながら、
「傷心のロキには何がいいかなー?」
「ひ・酷いね、君って……」
くくっと笑えば、止まらない。
ミラジェーンも肩を揺するので、尚更だ。
声を立てて笑えば、何だなんだと人が集まってくる。それはギルドのにぎわいの一つになって――流れていった。
* * *
おまけももらったどぉおおお!
つい二人にちょっかいだしちゃうロキが好きっ。
ゆーく様本当にありがとうございました!
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