[携帯モード] [URL送信]

小説(※二次中心)
プロローグ
これは……。

……かつて、夜天の魔導書がまだ【闇の書】と呼ばれていた頃の話。


闇の書には、守護騎士と呼ばれる特殊なプログラムがある。


――剣の騎士。

――鉄槌の騎士。

――湖の騎士。

――盾の守護獣。


それらは、等しく闇の書の主の命令を絶対とし、また主を守る為に存在していた。


……だが。


――その守護騎士達の中で、唯一闇の書の主に反逆した者がいた。


その守護騎士とは――。


》》》》》》》》》》》》》


轟々と燃え盛る猛き炎。

全ての命を糧として、紅の体躯を踊らせる様は一つの生き物のようだ。


そんな、灼熱の世界に浮かび上がる数個の影。


――横並びに佇む、五つの影。

――それらに見下される、地に臥した影。


シグナム
「――どうしてお前は、主に刃を向けた」

???
「その、声……、シグナム、か……」

凛とした女性の声に続くは、くぐもった男性の声。

ザフィーラ
「守護騎士として、主の命令には絶対遵守の筈だ」

ヴィータ
「何やってんだよお前……!」

???
「……俺は、もう……耐えられない……。いくら、主だと言え……ゴフッ! ……こんな、虐殺めいた、事……」

よくよく見れば、倒れている男の全身はズタボロであり、至る所から出血が見られる。

刃物傷、打撲創、火傷、開放骨折――。

シャマル
「愚かね〇〇〇〇。くだらない自我に目覚めでもしたのかしら?」

???
「なんとでも……言うが良い……。だが、俺は……間違った事を、言ってはいない……!」

金髪の女性の、冷たい瞳が男を射抜く。

まるでその瞳は、同胞を見るそれとは思えない程に怜悧であった。

それと同時の事である。彼等の中央に立っていた男――当時の闇の書の主が、歪んだ笑みを浮かべた。

背筋の凍るような、そんな笑みだった。


闇の書の主
「あーもーいいって。大人しく言うこと聞く気ないんだろ? じゃあお前いらね。さっさと死ねよ」

まるでハズレくじを引かされたような口ぶりで、闇の書の主は傷だらけで転がる男に対し「死ね」と言い放った。

シグナム
「しかし主、我々守護騎士はプログラム。老いることもなく、死ぬこともない存在。無論、あ奴とて同じです」

闇の書の主
「あぁ!? ンならさっさと封印でも何でもしちまえよグズが!!」

シグナム
「ッ……。申し訳ありません」

闇の書の主
「ったくよぉ、一体誰のおかげでシャバに居られるんだと思ってんだよ……」

ギリ。

それは、満身創痍の男――頭髪は透き通るような藍色――が、拳を握り締めた音。

???
「――俺は、必ず戻って来るぞ……!」

シャマル
「ッ!?」

封印措置を取ろうとしたシャマルは、彼の言葉に――いや、正確には眼光に、思わず足を止めた。

悪鬼や羅刹を彷彿とさせるその瞳には、周囲に燃え上がる紅蓮の焔よりも猛る、憤怒と憎悪の輝きがあったのだから。

???
「例え無限地獄をさ迷おうとも、【闇の書】を破壊するために……ッ!!」

ザフィーラ
「……無駄な足掻きを」

ヴィータ
「あたしら同様、闇の書は壊れないってのは、アンタも良く知ってるだろ!?」

???
「……何度でも壊してやるさ。転生する度に、俺は闇の書と闇の書の主を壊す為に、何度でも現れてやるッ!!」

あらん限りの声を張り上げ、傷だらけの男は咆えた。

眼球から血の雫を流し、言葉を発する度に血ヘドを吐き散らしても、呪詛の如き叫びを止めない。

闇の書の主
「は……、はは……。つ、強がりを……」

???
「まずは貴様からだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

闇の書の主
「ヒ………ッ!!」

ザフィーラ
「主ッ!!」

男が、鋭利な金属片を掴み投げ付けるのと、ザフィーラが地面を隆起させたのは、ほぼ同じタイミングであった。

金属片――恐らく傷だらけの男の武器の一部だろう――は、闇の書の主の前額部を易々と貫いた。

同時に、ザフィーラの攻撃もまた、地に臥した男の胴体を貫通する。

シグナム
「シャマル! あ奴を封じろ!」

シャマル
「解ったわ!」

ヴィータ
「ほ、本気かよシグナム!?」

ザフィーラ
「……主の最期の命令だ。我々が眠りに着く前に、やらなければならぬ」

ヴィータ
「……〇〇〇〇ッ!」

???
(貴様等……! 俺は必ず、貴様等を殺しに来るぞ…!! どれだけの時が過ぎようとも、必ず【闇の書】を破壊し、復讐してやる!!!)

シャマル
「反逆せし『常闇の騎士』、“〇〇〇〇”を永久なる封印の棺へ……!!」

???
「―――ォォォォォォォォ!!!」


》》》》》》》》》》》》》



――こうして。

もう一人の守護騎士、“常闇の騎士”は、主に対する反逆の罪により封印された。


だが、彼は誓い通り舞い戻るのであった。


“最後の夜天の主”の目覚めと共に―――。


???
「――闇の書の主よ。その命、世界の為に捧げよ……!」

それは、世界から零れ落ちた、“欠片の戦士”の悲しい物語……。



魔法少女リリカルなのはA's 《 空白の守護騎士 》


始まります――。

[次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!