豊川の屋敷B
「どうしたんですかそれ!?」
小春が驚くと、卍は「大したことないから」とそれを宥める。
そして、
「ちょっと噛みつかれちゃってさ」
と笑うのだった。
「噛みつかれたって……何に?」
小春が訊くと、卍より先に銀が答える。
「同族や。……せやろ?」
まさか。
小春はそう思ったが、卍は首を縦に振る。
「あぁ」
「どうして……?どうしてそんなこと……!?」
「それはね、相手が弱り切っていて……変化の維持さえ出来なくなってしまっているからだよ」
卍は悲しそうな顔をして言った。
「俺たち狐にとって属する神社や寺、祠の発展は、一族の収入みたいなものだ。
そこが荒れ果ててしまうと神力も弱まり、狐都にさえ戻れなくなって……酷い場合は理性を失い、ただの狐に戻ってしまう……」
「じゃあその傷をつけた狐さんは……?」
「その狐は、まだギリギリの理性で繋いでいた。
けれど、あの様子では時間の問題だろう……」
一同が静まる中、小春は訊ねた。
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