珍しい来客@
◇
小春が纏まった書類を銀の執務室に持って行くと、そこに銀の姿は無かった。
代わりに、久しぶりに会う男がいる。
「こんにちは、小春さん。
お久しぶりですね」
女性のような美しい顔立ち……
最上の水蓮歌だった。
「スイさん、いらっしゃてたんですか」
小春が嬉しそうに微笑むと、スイの微笑みも更に強まる。
「えぇ、仕事の件で銀に用がありまして。
どこかの軟派狐とは違って、口説きに来た訳ではありませんから安心してください」
彼が笑顔で皮肉るのは、恐らくあの男のこと。
「あ〜……それって、灯の事ですか?」
「はい。何でも彼、貴女が来てからますますここに居着くようになったそうですね」
「確かに……よく、来ますけど……」
あれからトウは、三日に一度は顔を出す。
前々から、用が無くても週に一回くらいは顔を出す狐だったらしいのだが……
"小春が来た途端にこれだ"と銀も呆れていた。
「あまり嫌わないでやってください、ああ見えて彼、寂しがりなんですよ」
「嫌うだなんてそんな……っ
寧ろ好意的にしてくれて嬉しいです」
それを聞くと、スイは穏やかに笑う。
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