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【視点・銀】





 銀の部屋よりいくらか荘厳な造りの蛍泉水の執務室。

 そこへ銀が立ち入ると、それに気づいた蛍泉水がスッと顔を上げた。


「珍しいな、お前が執務中に訪ねてくるなんて」


 蛍泉水は優しく微笑むが、銀は深刻な表情を崩さない。

 そして、そのまま父に問いかけた。


「親父、小春はどうしたらあの頃のこと思い出すんや……?」


 その質問に、蛍泉水の表情も難しいものへと変わる。

 彼は"う〜ん"と唸ると、一つ仮説を立てた。


「彼女が記憶を取り戻しつつあるのは、彼女の存在が稲荷神様に認められつつある証なんだそうだ……

 だから、彼女が更に稲荷神様に認められる行動をとれば……」

「小春の記憶は戻ると……!?」


 それを聞いて銀はパァッと顔を綻ばせる。


「あくまでも仮説だがな」


 蛍泉水の念押しを聞くか聞かないかで、銀はサッと踵を返した。


「どこへ行く?」


 蛍泉水の質問に銀は振り返り、告げる。


「小春んとこやっ

 何をしたらええか何て分からんけど、とりあえず傍におればしてやれることがあるかもしれんし……」


「銀」


 息子の言葉を遮った父の、少々重い声音。


「忘れるな。

 彼女の記憶の封印は、お前に与えられた"罰"であることを……」


 その言葉で、銀は表情を悲しそうに歪める。

 そして……


「……分かっとるよ」


 彼はため息を一つつくと、その部屋を後にした。


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あきゅろす。
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