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記憶

「あの〜……

 一体何なんですか?」


 朝餉が済み、蛍泉水が戻るのを待つ自室。

 ただならぬ蛍泉水の慌て様、そして銀と雪月花のソワソワとした様子が気になって小春は訊ねた。


「ご免なさいね、稲荷神様の御意志が分からない限り、お話することは出来ないの……」


 雪月花が申し訳なさそうに詫びたその時……


「待たせたね」


 と蛍泉水がそそくさと戻って来た。

 彼は小春と銀、二人の前まで来ると静かに腰を下ろす。


 そして、ゆっくりと口を開いた……


「どうやら、封じていたはずの記憶が戻りかけているらしい」


 その言葉に、何故かざわつく心……

 しかし頭では、言葉の意味を掴みきれずにいた。


「封じていた……って、どういう事ですかっ?」


 混乱しそうな小春を落ち着けるように、蛍泉水はしっかりと彼女の目を見据えて言う。


「小春ちゃん、君の記憶の一部は……訳あって、稲荷神様に封印されたんだ」


「……何で……?」


 不安げに言われて蛍泉水は眉を顰めた。

 そして、申し訳なさそうに言う。


「それは……直接、我々の口から語るわけにはいかないんだ。

 君が自分で思い出さなくては……」


 と……


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