中庭G
「そういえば祝辞、書けたの?」
「ん?あー……まぁな……」
小春の質問に戻ってきたのは、何とも頼りない返事……
「まさか、出来てないの!?」
「……まぁ、正直な話、全然」
「どうしてっ?」
「それは……」
銀は決まり悪そうに耳の後ろを掻く。
「オモロいの書けへんかってん」
「……へ?」
「卍と考えとるとお決まりな文章ばっかでつまらんのやっ
せやから僕は決めた!
アドリブで行く!」
それは、あまりにも拍子抜けしてしまう理由と計画。
「ちょっ……銀!?それで大丈夫なの!?」
「大丈夫やって!
……何となく、言うこと決まっとるから」
その時銀が見せた笑顔には優しさと……強さがあった。
そんな彼に小春が少し安心すると、二人は使用人達が来賓を誘導する方へと歩き出す。
祝典まで、もうあと少し……
小春は混乱する心を押さえ込み、今日こなすべき一番の行事に備えたのだった。
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