中庭@
ユメのお目当ての場所は、屋敷の真ん中にある中庭だった。
四方を廊下に囲まれたそこはそれ程広いスペースではないが、美しくあしらわれた植木が品の良い空間を作り出している。
「懐かしいなぁ〜、俺もよくここで遊んだよ」
走り回るユメと、彼女が装飾を壊さないようにワタワタとする火守を見守りながら灯は笑った。
「ここにいた頃は、灯もまだ小さかったんでしょ?」
小春が訊ねると、灯は懐かしそうに目を細める。
「んーまぁ、7.8歳ってところだしなぁ〜
あ、そうだ小春!こっち来てみ?」
灯はそう言うと、小春を中庭を囲う四本の柱の内、ある一本の前へ連れて行った。
「ここんとこ……分かるかな?一旦削ったり何なりで見づらくなってるけど……」
灯が指でなぞるそこには、横に線を引いたような傷が点々とある。
「まさか……ここで背を?」
小春がキョトンとして訊ねると、灯は「そ!」と頷いた。
しかしここは客人の目にも触れるであろう中庭の一角……
何もこのような場所で測ることはないだろうに……
「秋兄も今でこそ長らしくなったけど、昔は結構やんちゃでさ。
親と喧嘩すると腹いせに、ここで俺の背測ったんだ。
ま、ちっさな反抗だけどね」
ケラケラと笑いながらも懐かしそうな灯に、小春まで心が安らいだ。
人なつっこい灯のことだ、きっと子供の頃は可愛かったのだろう……
[前頁][次頁]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!