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神威夢シリーズ
第七訓:ホラー映画みながら笑う人って………ねぇ?
連絡室で啖呵をきってから1週間がすぎた。
幸運(?)なことに、蓮はまだ生きている。
そして、あの一件以来、神威が蓮に対して抱いたものは殺意でなく好奇心だったようだ。

仕事をサボっては暇潰しに蓮がいるところへやってくる。
普通の女だったら胸キュンの一つや二つするであろう神威の笑みは蓮にとっては不愉快になる原因の一つだ。
そしてたった今、その不愉快Smileが蓮の目と鼻の先にある。

蓮が今いるのは春雨内で唯一やすらげるはずの蓮に与えられた個室なのだが、なぜか蓮のベッドの上で寛ぎ、蓮をジーっと観察している神威のせいで今一番安らげない部屋と化している。
「なにしてんの?仕事は?」
冷たい目で神威を見るが神威は何も気にしてはいないようだ。
「あんなの、阿伏兎一人でやればいいんだよ。それより、暇潰しに一発ドオ?」
ぎょっとして、神威をみる。〈お茶飲まない?〉のテンションでとんでもないことを言ってくるから神威との会話は油断できない。流れで“はい”と言ってしまいそうだ。
「するかっボケ!!………ってか、仕事さぼる男って最低〜、阿伏兎かわいそ〜あぁあかわいそ〜」
自分の命を脅かす言葉がスラスラとでてくる。
言ってはいけないと思っているのに、蓮の口は蓮の体から独立したようだ。
蓮は冷や汗をタラタラ流しながらも神威にひややかな視線を送るが神威は全く気にせず蓮に話しかける。
「あー退屈だ。蓮の骨折っていい?」
そんなことを言いながら蓮の腕をひねりあげる。
「なに!その八つ当たり!痛いって、腕がギチギチいってるよ!離せよ!ボケナスッッ」
さっきまでベッドで大人しくしていたのに…全く油断ならない。
蓮が喚きながら神威にひたすら足蹴をくらわすとようやく蓮の腕から手をはなした。
「本当に蓮は面白いなぁ」
ケラケラ笑いながら言う神威を蓮は睨み付ける。
こいつのアホ毛をむしってやりたい。
自分が年頃の娘のようなドリーム思考じゃなく控えめな暴力思考に目覚めてきてるのも、この能天気な頭をした男のせいとしか思えないし………アホ毛をむしれなくとも、神威がばか笑いしたり恐怖であおざめたりするところをみてみたい。
「……………神威」

「何?」

「私、今すぐ神威とみたいDVDがあるんだけど…」

蓮が今まで向けたことがないような真摯な目をして訴えると、神威は一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐにいつもの笑顔に戻り、「いいよ。なにがいい?」と言って蓮からみたいDVDをきくと、機嫌よく部屋をでていった。





***
「蓮、こっちおいで」

言われるがまま蓮が神威についていくと、ついたのは会議室。
「ここ、なに?」訝しげな目で問いかける蓮を無視して神威はスタスタと会議室の中に入っていく。

「ここは、会議用に大きな画面があるんだよ」

平然と言う神威に蓮は呆れた。
会議室が映画館ですか。いいご身分で。
ますます、アホ毛をむしりたくなってくる。
しかし、そこは第七師団とはいえ春雨の宇宙船。会議用の画面というのが桁外れにでかい。
首が痛くなりそうだがこんな大画面で映画がみれるなんてラッキーだろう。
「蓮、なんでこんなのが観たいの?」
画面いっぱいにタイトルがうつしだされると蓮に神威が聞いてきた。


《チェイソンの誕生日》


「はぁ?あんた、何いってんの?こんな名作を知らないわけ?あ〜あ、これだから田舎者は…ハァ、あんたみたいな貧乏者にこれの良さがわかるわ「殺しちゃうぞ?」」
「あははっ!神威にはレベルが低すぎかもだけど、私に付き合ってね!」
神威がこちらに向けた笑顔を無視し、蓮は画面をみた。
この映画は自分の誕生日に殺されたチェイソンという男の怨念がうんたらかんたら〜、という、いわゆるスプラッター映画だ。これを観た観客が恐怖のあまり漏らしたとか、ショック死したとかいう噂があるような、ないような。とにかく、とてつもなく怖い映画らしい。

「ぎぃゃっ」

「あーー、なんでその部屋はいるかな?一人で行動とか、マジ馬鹿!ハイ、死ぬねこいつ」

「あぁーやっぱ、やられたじゃんんん!!!!アホだよ、この人!アホだって」

確かに開始30分で既に登場人物の1人はチェイソンに呆気なくやられ、蓮は涙目になって悲鳴をもう何度もあげている。

「蓮はなんでいつもは憎たらしく、怖いものなんてないみたいにしてんのに、こういう時は悲鳴あげて怖がるわけ?」

「なにっっ!その失礼な発言!それとこれとは別なのよっ…………って…きた!きた!きたーー死ぬー」

喚きながら手で顔を隠し、恐る恐る指の間から映画をみる蓮に神威は少しばかり呆れた。

「人間は本当に面白いね」

そう言いながら神威は画面をみる。新たに若い男がチェイソンの手にかかったようだ。
鮮血が散る。

「あはは この切り口は、なかなかいいね」

ケラケラと神威は嬉しそうに笑う。
初めて神威の興味をひいたのは、男の首を斧で切るチェイソンの鮮やかな手つきだった。
「そこぉぉぉおお!!!!????」

先程までとは違う蓮の悲鳴が、宇宙船内に響きわたった。







**あとがき**
文章力!私が今、一番欲するもの。
私が想像してたのと、なんか違うんだよ!
そして、「アホ毛」って単語が多すぎ!………まぁ、好きなんですよ…アホ毛


とにかく、これは神威さんはやっぱり神威さん。って話です。(多分)

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