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神威夢シリーズ
第四訓:わからないことは素直に聞くべき
神威との初対面を果たした蓮は今、とてつもなく長い廊下を1人寂しく歩いている。

―広すぎっしょ!無駄に広いってここ。一体どこなの?何をする場所なの?―

「ヤッホー」

山でお馴染みの言葉を思いっきり叫ぶと奥からヤッホー、ヤッホーと響きが伝わってきた。

―私っていったいなにがしたいの?―

「おい、嬢ちゃん。もう起きても平気なのか?」

「ぅぎゃっ!」
考え事をしていたため、後ろからの野太い声に思わず蓮は悲鳴をあげる。
恐る恐る振り向くと、そこには阿伏兎がいた。

「え、えーと…阿伏兎さんですか?」
巨大でガッチリしてても阿伏兎には神威のような異様なオーラが感じられず、蓮は少しばかり安心した。
「あぁ。阿伏兎でいい。団長がどこか知らねぇか?」
阿伏兎は疲れたように蓮に問う。
「あっ、神威……さん、ならさっき私が寝ていた部屋にきて、すぐに疲れたって言ってどこか行きましたよ。」

「くそっ。仕事があるってのにフラフラしやがって」
本気で困ったように嘆いている阿伏兎に蓮はなぜか罪悪感を持ちながら言葉を続けた。

「……あの、それで、神威…さんが、ここの詳しいことは阿伏兎に聞けと。」

「はぁ!!??
ったく、早速世話を放り投げてるじゃねぇか………」
心底げんなりとした顔をした阿伏兎はブツクサ言いながら、蓮を見ると、一つため息をついて「ついてこい」と、スタスタ歩きはじめた。

「えっぇつ、いいんですか??」

「しょうがねぇだろぅ。人間のお前には危ないとこだからな。死なれたら後味わりぃしよ。」
それだけ言うと阿伏兎はまた、歩きだした。



***
ここは無駄に広い。
案内してもらっている間に阿伏兎とはだいぶ打ち解けた。


食堂、大浴場、娯楽室、よくわからん倉庫、食堂、食堂、食堂………。「阿伏兎、なんでこんなに食堂が?」

「うちは大食らいが多いからなぁ。団長もいるし」

―ここの奴らはどんだけデンジャラスな胃袋してんだっ!!!!―


阿伏兎の告白(?)に若干ひきつつ、蓮は先程から気になっていた事を阿伏兎に聞いた。

「神威さんも、天人なんですか?」

「言ってなかったか?団長も俺も、あと、この船にいる奴らにも夜兎がいる。」

「あぁ。夜兎ですかぁ………………って、夜兎?????!!!!」

阿伏兎の言葉に耳を疑う。

自分は吉原で宇宙最強ともいわれる、傭兵部族・夜兎の……しかも、何のかはわからないが、団長と呼ばれるほどの男と差しで戦ったというのか?
今更になって青ざめている蓮に阿伏兎は苦笑した。
「それに、うちの団長と戦場で目があった奴で助かったのは嬢ちゃんぐらいだな。
団長に気に入られたのは幸運だったな。」

よかったなというように蓮の頭をポンポンとする阿伏兎に蓮は指をつきつける。
「そう!そこなのだよ!阿伏兎君!なんであんたらの団長様は私なんかを気に入って……………そんで、わざわざ連れて帰っちゃってんの?」
助かったのは嬉しいことこのうえないのだが、神威に“気に入られた”ということが納得いかない。
そして、神威に気に入られたせいで自分がこんな意味不明な場所にいることに蓮は一番納得いかないのだ。
理由を知りたい。
神威に気に入られた理由を。
「知るか。そんなもん。嬢ちゃんが団長の考えていることが分からんように、俺らにも団長の考えていることは全くわからない。し、わかりたくもない。」

阿伏兎は、蓮の望みをことごとく打ち捨てた。
けれど、蓮にも分かる。神威が考えていることなんてあまり知りたくない。

知らないほうがいいと思う。
「まぁ、嬢ちゃんは団長の機嫌を損ねて殺されねぇようにすることだな。
…………まっ、部屋もだいたい回ったしここでの注意も話した。俺は、仕事に戻るから後は勝手にやれよ。」

阿伏兎は一つ面倒なことが減り、晴れ晴れとした顔で去ろうとする。
「待って!阿伏兎!最後に一つ。」
蓮はここに来たときから気になっていたことがあったのだ。

気になっていたそれがやっと分かる。



「………あのさ、結局ここって一体どこ?」

「え"っ……そこから?」

蓮は、阿伏兎の顔がはっきりと歪むのがわかった。

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