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神威夢シリーズ
第三訓:何事も最初が肝心
蓮は激しい肩の痛みで目が覚めた。

―痛いっっっっっっっっ
…………ってか…ここ、どこ?―

辺りを見回すと無機質で殺風景な部屋。そして、自分の服までもが、着物から緩いシャツにかわっていた。
蓮が必死に記憶をめぐらせると、あの優男の顔がうかんできた。

―あいつっ、あんな綺麗な顔してやることはなんだよ!やっぱり人間顔じゃないよっ!
………けど、私は殺されてない。
ってことは、ここは吉原?……いゃいゃ、吉原だったら私は脱走者として無事じゃないはず…………―

色々な考えを頭にうかべ、最後に頭にうかんだ考えに蓮は納得した。

―やっぱり、あのあと、私をみつけた心美しい誰かさんが私を介抱してくれたんだっ!―

「ぅへへっ、私って本当にラッキーだなぁ♪本当に心美しい誰かさん!ありがとうございました。
ではでは、トンズラこかせていただきます!
お礼は後日、あらためて!」
声に出して誰もいない部屋にむけて礼をいうと、肩の痛みも忘れ、勢いよくドアを開けた。


…………そして、閉めた。


―な、な、なななななななななななななっなんであの優男がいるのさぁぁぁぁあ!!!!!!「なんだよ、あんた。せっかく手当てまでしてやってんのに逃げる気?まぁ逃げるなんて絶対に無理だろうけどね」
蓮の心の叫びも無視して優男が部屋にはいってくる。
「なにしてんの?」
神威が蓮に問いかけるが、心美しい誰かさんを思いうかべてたはずなのに、目の前に現われたのが心よく分からん危ない優男だったため、蓮の頭は真っ白。

今はしりもちをついて、神威にむけて指をさし口をパクパクしている。
しかし、頭の真っ白が真っ白になりすぎると、次は神威への怒りがわいてきた。
「あんた、一体なにがしたいわけ??!!!
はぃ!私の肩にご注目!一体誰がこの痛々しい傷をつけたのでしょう!!」
興奮しながら自分の肩を指差す蓮とは対照的に神威は落ち着いて答える。
「俺に決まってるじゃないか。あんた、血の流しすぎで頭までおかしくなったのかい?」

「だぁぁぁあ!違うだろっ!頭おかしいのはお前だって!あんた、自分で半殺しにした相手を手当てって、何考えてんの?」
蓮は、荒くなった息を整え、神威を真っ直ぐみる。
そんな蓮を神威は値踏みするように見ながら言う。
「あんたは、俺に殺されたかったの?」

「なわけあるか!!」
蓮の激しい突っ込みにも神威は眉一つ動かさずに続ける。
「それに、俺はあんたが気に入ったんだよ。人間の女で俺に血をながさせたのはあんたが初めてだからね」
蓮は神威の包帯がまかれている首をみて驚いた。

―私の小太刀で?………けど、この様子じゃ擦っただけみたいね―

「あんた、何者?私を気に入ったって………どうするつもり?」

先程、怒鳴り散らしていた自分はどこにいったのか。緊張が蓮の体を支配する。
ここがどこかもわからない。そして、目の前には自分を半殺しにした男。恐怖を感じないことが不思議だ。
「どうするつもりもないよ。あんた、百華を脱走してたんだろう?
命がけで自由を手にしようとする女、俺に血を流させた女に少し興味がわいただけだよ。」
神威は思い出したように言葉を続けた。
「ここの詳しいことは、阿伏兎っていう、吉原で俺と一緒にいた奴に聞いてよ。俺は疲れたからもう行くね。」
さっさと部屋からでていこうとする神威を蓮は思わず呼び止めた。

「な、名前くらい教えなさいよ」

「神威」

神威はそれだけ言うと蓮の部屋からでていった。




**あとがき**
ヒロイン、うるさっ

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