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神威夢シリーズ
第二訓:未知との遭遇ほど迷惑なものはない
倒れている女達。そのなかに1人たたずむ小太刀を持った女。

こんなドシリアスな場面を打ち壊すかのように間延びした拍手をしながら、蓮に声をかけてきたのは淡い緋色の髪をみつあみにし、雨も降っていないのに、なぜか傘をさしている胡散臭い笑みをうかべた優男だった。
そして、その傍らには怪我をおった中年の男がいる。
「あんた、何?この状況わかってる?」
もともと世間からは程遠い吉原で生きてきた蓮はみるからに怪しいこの2人組にも、物怖じせず問いかける。
しかし、優男は蓮の問いかけを聞いていないのか、ジリジリと迫ってきた。

―こいつ、オーラがヤバイ―

優男の異様なオーラを感じ取った蓮はこの場を脱する方法を考えながらあとずさる。
そんな、蓮をしってかしらずか、相変わらず胡散臭い笑みをうかべて蓮に話しかけてきた。
「そんなに、ゆっくりしてていいのかい?ここに倒れている奴ら、全員みぞおちだろ?そろそろ目が覚める奴もいるんじゃない?」
蓮は優男の言う言葉に息をのむ。

―遠目で見ただけで、みぞおちのことを見破ってる…クソッ。なんでこういう大事なときにこんな奴とでくわすんだよ―

「あんた、名前は?」

「蓮。」とだけ言い蓮は素早く跳びあがる。そして、それと同時に苦無を優男めがけ投げつけた。
素早く屋根に着地し、優男をみると、しっかりと狙いを定めたはずの苦無は、全て弾かれあたりにちらばっている。
そして、蓮にむけられた傘の先端から煙がふきだす。

蓮にむけて発砲したのだ。
2、3発はギリギリのところでかわしたが、4発目が蓮の肩を貫く。
体制を崩し落下しそうになったとき、蓮は自分の身体で死角をつくり、そこから小太刀を優男にむけて放った。



***
「おぃおぃ。気ぃ失っちまってるよ、その女。どうすんだ?団長」
先ほどから壁にもたれかかっていた怪我をおった中年の男に団長とよばれた優男は、少し考えてから楽しそうに答えた。
「ん〜?どうしよっかな?阿伏兎。春雨に連れてかえっちゃおうか?」
それに対し阿伏兎とよばれた中年の男は激しく反論する。
「このすっとこどっこい!ペットじゃねぇんだぞ、人間の女だ。それに、こういうのは結局俺とかが世話するはめになっちまうんだよ。」

「俺が最期まで世話するって」
一体何を考えているのかがよくわからない団長―春雨第七師団団長神威にため息をつきながら、神威の腕のなかで気を失っているこの言い合いの原因となった人物に目をやる。
肩を撃たれ、神威に小太刀を放った蓮はそのまま落下し、地面に激突する寸前で神威に受け止められた。
そして、神威の首筋は蓮の放った小太刀の擦ったところからの出血で真っ赤に染まっている。
「それに、元老にはなんて説明すんだよ?」
今度は赤く染まっている神威の首をみながら阿伏兎は尋ねた。
「それをうまく説明するのが、できのいい部下だろ?それに、人間の、しかも女で俺に傷をつけれるなんて大したもんじゃないか。」
そう言うと、阿伏兎を肩で支え蓮を小脇に抱えなおす。
「はやくしないとこの女の追っ手がきちゃうよ。はやく帰ろう」

阿伏兎は蓮を連れて帰る気満々の神威にため息をつきながら「最後まで面倒みろよ」と釘をさす。神威は、それにハイハイと適当に返事をしながら春雨へむけて歩きだした。



**あとがき**
全然ヒロインの性格とかでてきてませんねいいのかなぁ(.. ;)今回は神威と阿伏兎の「さいごまで面倒をみる」の“さいご”という言葉を意識してかえてみました

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