*ss*
奇跡のような幸せを。
「あ、ほら絳攸、雪だよ」
最近ではすっかり賢君めいた王の側近仕事が忙しくて、季節を気にかける暇なんてなかったから、空を舞う雪が何だかやたら新鮮だった。
「本当だ。もう冬だな」
隣では同じように足を止めた絳攸が、空を見上げて言った。
「ねぇ、覚えているかい?もう随分前のことだけれど」
「何がだ?」
「私と君が再会したのも、こんな風に雪の似合う寒い日だった」
「そうだったか?」
「雪が降ってるのに、君は主上を捜しに行くって迷子になって」
「―――…ほっとけ。忘れろ」
そういえばそうだったかかもしれない、と絳攸は思った。
確かまだ二人とも主上付きになったばかりで、自分は必死に主上を捜しまわっていた気がする。結局見つからなかったが。
「また君の側に居られるなんて、夢にも思わなかったよ」
「俺はまたお前と一緒かって、うんざりしたがな」
「相変わらずつれないんだから、君は」
(確かに、武官になったこいつと、また一緒に働く日が来るなんて、あの時は思いもしなかった)
今ではすっかり、隣に居るのが当たり前になってしまったけれど。
「ねぇ絳攸、私はまた君に逢えて本当に良かったと思ってるんだ」
初めて会ったときから、どこか心を捉えて離さなかったひと。
離れ離れになっても、この想いを手放さなくて良かった、と楸瑛は思う。
(ああ、君を忘れてしまわなくて本当に良かった―――…)
君と出逢い、側に居られる、この奇跡のような幸せが。
どうかどうか、これからも一生続きますように、いつだって願うから。
「急に何言ってるんだお前は。ほら、寒いから早く執務室に戻るぞ」
寝言は寝て言え、なんてぶっきらぼうに呟いて、それでもこちらに手をさしのべてくれる君が愛しい。
だから、その手をつなぐふりをして強く引き寄せ抱き締めた。
○●後書き的な。●○
inspired by: ELT/恋をしている
楸瑛さんの台詞に若干現れてるかも。
この曲好きだー!
やっぱでれ絳攸が好きらしい。
最後のくだりは本気でまとまらなかったです。
なんかグダグダ。で、結局甘。みたいな。
著:多分2007冬
UP:2008・6・21
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