[携帯モード] [URL送信]

*ss*
子離れ(黎百視点双花)
扉の外、養い子が廊下をうろつく気配に、黎深は忌々しそうに言った。


「また迷っているのか」


一方で百合は、笑みを含んだ表情で扉を見やる。


「お客さんを迎えに行くんでしょ」
「気に入らん」
「まったく子供だな君は」

「許せん、藍家の若造め…」


手に持つ扇を今にも折らんばかりの勢いで毒づく黎深に、百合は呆れたように肩をすくめた。


「それを直接絳攸に言えばいいのに」
「絶対言わん」
「だろうね。―――けどね黎深、」
「何だ」


急に声つきが真剣さをおびる百合に、黎深は眉をひそめる。


「分かってると思うけど、まだ藍将軍には手出しちゃダメだからね」
「ふん」
「いっくら君が気に入らないからって、これはあの子の問題なの」
「――――……分かっている、だが」
「ええ。もちろん、そう簡単にはくれてやらないけど」


百合だって、手塩にかけて育てた養い子が愛しいのだ。

たとえ絳攸が本気で彼を愛したとしても、これだけは譲れない。



「あの子を一番に想ってくれないんじゃ嫌、でしょ?」


花街や後宮に通ったり、“藍楸瑛”が絳攸と本気で向き合おうとしない今は。



黎深も百合も、絶対に愛しい養い子を手放したりしないのだ。


「まぁ、せめて邸に呼ぶくらいなら許してあげてもいいかな」
「何かした瞬間に殺す」
「…まったく、相変わらずなんだから」



そして何度か絳攸の気配が近付いたり遠ざかったりしたのち、表で来客を告げる門番の声がした。







○●後書き的な。●○
2007初冬著。
新刊白百合を読んで、百合姫が書きたくてしょうがなかったときのものです。
前作の反省を生かしたのかは謎ですが、タイトルはスッキリさっぱり。


2008・6・13UP


[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!