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侍郎impromptu(侍郎ズ)
朝廷内のとある一室。
かたり、と茶器を置く音が小気味よく響く、平和な午後。
侍郎位の人間が三人、お茶請けの高級菓子の載った丸机案を囲んでいた。


三人共、今だけは煩雑な仕事を抜け出すことを許された。理由は。


「本当に黄戸部尚書には感謝の念で一杯です、景侍郎。うちの酔いどれ尚書を叱咤して仕事させることができるのは黄尚書と、今は茶州においでの鄭官吏のみでしょう」
「…どうでしょう、後でお酒を提供しろと言われているのかも」
「確かに、あの酔いどれならやりかねない…」
「うちの上司も、今日はちゃんと働いていました。…本当に何と言ったら良いか、景侍郎」
「あの吏部尚書が真面目に仕事を…信じられません」
「まぁ菅尚書も紅尚書も、今日くらいは侍郎殿に息抜きして欲しいと思われたのでは。私もほ…いえ黄尚書に、仕事は気にせずゆっくりしてこいと言われましたから」






そんな訳で、戸部尚書黄鳳珠の説得の賜物か否か、いつもは仕事を怠けがちな菅・紅両尚書が侍郎の分の仕事も片付け、三人の侍郎に暇ができた。


それで吏部、戸部、工部侍郎、ここに揃い踏みなのである。


玉と絳攸は口々に鳳珠の功績と褒めたたえたが、実は工部、吏部の尚書は意外と侍郎想いなだけだと柚梨は思ったりするのだったが。


それはそれ。今はしばし、同僚同士の楽しい娯楽の時だ。


「さ、どうぞ菓子を召し上がって下さい。今、巷でかなり流行っているもののようなのです」


玉が自慢気に勧めた菓子は、やはりかなり美味だった。


「いかがです、李侍郎?」
「…美味しい。有難う御座います、欧陽侍郎。ところでこれはどちらに行けば買えるのですか?」
「それはですね―――…」
「―――…おや李侍郎、どなたかに贈られるのですか?」
「ええ。―――…今度紅州から帰って来る、義母にどうかと思いまして」
「貴方の義母――…つまり、紅尚書の奥方様ということですか」
「そうです」
「それはそれは。…一度お目にかかりたいですねぇ」
「…まぁ、機会があれば。あ、景侍郎、お茶のお代わりいかがですか」
「有難う御座います、李侍郎」
「そういえばこの間、酔いどれ尚書がですね―――…」






仕事の話、上司の話、趣味、自分の話…。
話は尽きなかった。
そして夕刻―――――…






「おいコラ陽玉、てめー自分だけお楽しみかよ。早く仕事戻りやがれ」
「絳攸、いつまで遊んでいる?吏部侍郎が良い身分だな」
「…柚梨、帰るぞ」




工部、吏部、戸部の尚書が揃い踏みという、地獄絵図となっていた。













◇後書き◇
タイトルimpromptuは即興曲という意味です。
何が即興かといいますと私の執筆速度です。
前作と次作の緩衝材代わり。
絳攸以外の侍郎は初書きなのでキャラが定まってないなー;
でも一度やりたかった侍郎ズ。


著:2008・8・25(檜山誕)
UP:2009・2・28


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