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*ss*
ANSWER
答えは簡単。
それは恋だった。







通り過ぎた風に、振り返った瞬間、求めていたものが見えた気がした。
歩みを止めた自分に、容赦なく叱咤の声が飛ぶ。
その響きは、なんだか新鮮だ。


「こら新人、怠けてないで手ェ動かせや」
「…白将軍、何故こんなところに」
「今が両軍合同演習中なのを忘れたか、藍家の四男坊め」
「…申し訳ありません」
「ふん、うじうじ小さいことで悩むくらいなら藍州へ帰ってしまえ」
「…いえ、そうでは……白将軍?」


数瞬前まで自分を怒鳴りつけていた隣軍の将軍は、次の標的に出会ったのか、既に楸瑛の前から消えていた。
そして彼の怒鳴り声がまた、遠くで鳴り響いた。





楸瑛が国武試に及第し、武官の道をを歩み始めて、もうしばらくの時が過ぎた。
文官を辞めたのは自分一人ではどうにもできない理由で、楸瑛もそれに何も異存はなかった。―――…はずだった。


(なのに―――…文官として過ごしたあの日々を、惜しいと思うなんて)


どうして、よりによって“彼”が自分の心を占めるのか。


(―――…それが知りたくて、わざわざこんなことまでして、此処に残ったのか)


胸に萌す熱い衝動の、答えをずっと知りたかった。


(やっと、分かった)


少しだけ湿気を含んだ、初夏の風に。
揺れる銀色。




君に、恋をした。




(離れてやっと気づくなんて、遅いな)


百戦錬磨の自分のくせに。
ふ、と自嘲気味に漏らした溜め息は。



「こらこのクソ生意気なド新人――――!」



踵を返し戻ってきた彼の将軍の怒声にかき消された。

:fin:










○●後書き的な。●○
inspired by:ANSWER/森川智之
さぁ/SURFACE

楸瑛さん、気づいたの巻。
だいぶ捏造ありです。
かなり分かりにくいかと思いますが、銀色は絳攸の髪の色です。
…久々に見掛けたら答えが分かってしまった、と。



いつか絳攸で森川「QUESTION」やりたいなぁ^^


著:2008・7・13
UP:2008・11・9


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あきゅろす。
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