*ss*
初恋リズム(双花+珀明)
貴方の室に入る前には、僕はいつも襟を正す。
李絳攸様、吏部侍郎、僕の目標。
そして、初めて恋した、ひと。
「失礼します、絳攸様。追加の書類とお茶をお持ち…」
「だから黙れと言っているだろう、この大馬鹿者が!!」
しました、と言おうとした珀明の言葉は、彼の人の怒声に遮られた。
互いに目を丸くして戸惑うなか、第三者はのんびりと口を挟む。
「ほら絳攸、若い官吏が君の短気に固まっているじゃないか。―――…あぁ済まない、迷惑をかけたね。君は確か、碧…珀明君といったかな。それ、李侍郎に?」
言われてやっと、珀明は己の立場に気づいた。
「すみません、今将軍の分もお茶を―――…」
「あぁいや、いいんだよ。元同期の彼を、世間話がてら訪ねただけだからね」
「そうだぞ楸瑛、俺は忙しいんだ、早く帰れ」
「はいはい。…あぁ絳攸」
「何だ」
藍将軍は、絳攸様の耳元に何か囁いて、それから室を後にした。
すると囁かれたそのひとは忌々しそうに舌打ちをして、悪態をつく。
その顔が真っ赤に染まっているのは、この室に居る珀明にしか分からない。
「絳攸様、どうぞ。お茶、冷めてしまいますよ」
「―――…済まなかったな珀明。どうも見苦しい所を」
見せてしまったな、と憧れの人は困ったように笑っていた。
なんだかその笑顔は、僕の心から嫉妬を奪うかのようで。
「おふたりは恋仲なのですね、やっぱり」
不思議と、言葉は紡がれた。
「どうせ知っていたのだろう?吏部の者たちは」
「えぇ、まぁ。でも、これで確証がとれましたね」
「お前らがどう思おうが勝手だが、今のことは人に言うなよ?」
「――――…じゃあ、貸し一つということで」
「ふ、いいだろう」
尊敬してやまない人は、滅多に見せない会心の笑みを浮かべた。
それはひどく綺麗で、僕にはそれだけで満足だった。
*
藍楸瑛、左羽林軍将軍、絳攸様の愛しい人。
いつもその鉄壁を、いとも簡単に壊す存在(ひと)。
彼に敵わないというのなら、せめて負けだけはしないように。
貴方を想えたら、良いんだと思う。
多くを望んだりするもんか。
初恋は須く叶わないと言うじゃないか。
決して諦めはしないけど、さよなら僕の、淡き初恋。
:fin:
●○後書き的な。○●
珀明付箋宣言…じゃなかった不戦宣言。←
でも負けたわけじゃないんだからね!
…みたいな。
甘酸っぱい話がいいなぁと思ってたら、タイトルが一番甘酸っぱくなりました。
超不本意。(笑)
なかなか印象の薄いタイトルでもあります。
いつか変わるかも;
楸瑛さんの台詞をほぼ完璧に予測する私の携帯。
いかに同じことばっか言ってるんだという(笑)
以下常春頭の弁解という名の囁き。
「もちろん私は、怒っている君も可愛いと思っているからね?」
後で絳攸に殴られるといいよ(笑)
著:2008・6・29
UP:2008・10・13
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