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*ss*
初恋リズム(双花+珀明)
貴方の室に入る前には、僕はいつも襟を正す。


李絳攸様、吏部侍郎、僕の目標。
そして、初めて恋した、ひと。


「失礼します、絳攸様。追加の書類とお茶をお持ち…」
「だから黙れと言っているだろう、この大馬鹿者が!!」


しました、と言おうとした珀明の言葉は、彼の人の怒声に遮られた。


互いに目を丸くして戸惑うなか、第三者はのんびりと口を挟む。


「ほら絳攸、若い官吏が君の短気に固まっているじゃないか。―――…あぁ済まない、迷惑をかけたね。君は確か、碧…珀明君といったかな。それ、李侍郎に?」


言われてやっと、珀明は己の立場に気づいた。


「すみません、今将軍の分もお茶を―――…」
「あぁいや、いいんだよ。元同期の彼を、世間話がてら訪ねただけだからね」
「そうだぞ楸瑛、俺は忙しいんだ、早く帰れ」
「はいはい。…あぁ絳攸」
「何だ」


藍将軍は、絳攸様の耳元に何か囁いて、それから室を後にした。

すると囁かれたそのひとは忌々しそうに舌打ちをして、悪態をつく。


その顔が真っ赤に染まっているのは、この室に居る珀明にしか分からない。




「絳攸様、どうぞ。お茶、冷めてしまいますよ」
「―――…済まなかったな珀明。どうも見苦しい所を」


見せてしまったな、と憧れの人は困ったように笑っていた。
なんだかその笑顔は、僕の心から嫉妬を奪うかのようで。


「おふたりは恋仲なのですね、やっぱり」


不思議と、言葉は紡がれた。




「どうせ知っていたのだろう?吏部の者たちは」
「えぇ、まぁ。でも、これで確証がとれましたね」
「お前らがどう思おうが勝手だが、今のことは人に言うなよ?」
「――――…じゃあ、貸し一つということで」
「ふ、いいだろう」


尊敬してやまない人は、滅多に見せない会心の笑みを浮かべた。
それはひどく綺麗で、僕にはそれだけで満足だった。





藍楸瑛、左羽林軍将軍、絳攸様の愛しい人。

いつもその鉄壁を、いとも簡単に壊す存在(ひと)。
彼に敵わないというのなら、せめて負けだけはしないように。
貴方を想えたら、良いんだと思う。

多くを望んだりするもんか。
初恋は須く叶わないと言うじゃないか。

決して諦めはしないけど、さよなら僕の、淡き初恋。

:fin:






●○後書き的な。○●
珀明付箋宣言…じゃなかった不戦宣言。←
でも負けたわけじゃないんだからね!

…みたいな。

甘酸っぱい話がいいなぁと思ってたら、タイトルが一番甘酸っぱくなりました。
超不本意。(笑)

なかなか印象の薄いタイトルでもあります。
いつか変わるかも;


楸瑛さんの台詞をほぼ完璧に予測する私の携帯。
いかに同じことばっか言ってるんだという(笑)

以下常春頭の弁解という名の囁き。
「もちろん私は、怒っている君も可愛いと思っているからね?」

後で絳攸に殴られるといいよ(笑)

著:2008・6・29
UP:2008・10・13


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あきゅろす。
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