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*ss*
キスから始まる空の旅。(現パロ)
愛しい君には、ただとびきりの甘いキスを。


「……おい」
「何?」
「どうして乗った早々それなんだ」
「え?あぁ、頂上でしたかったかい?」
「だから……」
「でも心配しなくていいよ。ちゃんと頂上でもしてあげるからね」
「――…黙れ常春頭、少しは人の話を聞けーーーっ!」


遊園地デートの定番、巨大観覧車は現在上空(たったの)1メートル。


「全く、そういうことをするために乗ったんじゃないだろうが!」
「え?そうなのかい。私はてっきり―――…」
「どうしてすぐ考えがそっちへ行くんだ貴様は」
「だって、ね。王道だろう?遊園地デート、観覧車の中でキス」


楸瑛は意地の悪そうに笑った。
貴重な休みに、『平日の空いている遊園地に行きたい』といきなり絳攸を連れ出したこの男は、どうやら非常に上機嫌であるようだ。
心底遊園地を満喫しているらしい。子供みたいだ、と絳攸は思った。


「お前も物好きだな」
「ん?」


絳攸の感情なんて知らない振りをして、彼は首を傾げる。

本当は、気づいているくせに。


「どうしてそんなに好きなんだ、って話」
「何が。君のことが?」
それもあるが、とは死んでも言ってやらない。
「そうじゃなくて。―――――……キ、…キスが」


真っ赤になった顔を背ける絳攸に、やっぱり至極嬉しそうに楸瑛は口の端をつり上げる。


「ねぇ、絳攸?」


何だ、と声をあげる間もなく唇は奪われた。




「…………………お前な、」
「おや。どうして怒るんだい」


君の望んでいた頂上だよ?


「誰が望むか、馬鹿」
「またまた、そんなことばかり言って。君も意外とロマンチストだよね?」
「黙れっ!今すぐここから叩き落としてやる」
「まあまあ。ほら、あと半分だよ。怒ってないで楽しまないと」


言うが早いか、また彼の顔が近づいてくる。


「おい、楽しむんじゃなかったのか?」
「充分楽しんでいるけれど?」
「どうしてまたそれなんだ!」
「楽しんでいるじゃないか。君を、ね」
「死ね」
「つれないねぇ。恋人としてはもう少し優しくしてほしいな。―――――…まぁ、そんな君が好きだから良いのだけれど」
「お前という奴は、本っ当にどうしようもないな!」
「…ほら、こっち向いて」
「………」



三度目のキスは、一度目よりも、二度目よりも、ずっとずっと甘く。



「さっきの質問に答えてあげるよ」
「は?」
「どうしてそんなにキスが好きなのか、って」
「…その話を蒸し返すのか、」


それは愚問だね。


「君が好きだからだよ。ね、愛しい人?」


砂糖よりも甘い台詞に、溜息を一つだけこぼす。


「馬鹿め」


そうしたらもう、彼がとる行動なんて一つきりだと分かっているから、絳攸は大人しく目を閉じた。


本当は少しだけ望んでいたのだって、やっぱり死んでも教えてやらない。




遊園地デートの定番、巨大観覧車は、地上0メートルに向かって現在下降中である。



◇おまけ◇
「――…、という訳です。社長」
「つまり、午前中休みだからそなた達は遊園地に行っていたのか?」
「平日でしたからねぇ。空いてましたよ」
「で、職場に直行して、今に至ると?」
「ええ」
「―――…じゃあそなた達、もしかしてスーツで遊園地に」
「視線が本気で痛かった。もう俺は絶対行かない」
(それ以前に断れば良かったのに、絳攸……)












●○後書き的な。○●
あっま…
てか甘々通り越してむしろギャグですね。(笑)
キス4回です。
冷静に考えるとすごい数です。
とにかく王道を追求した一品となりました。うん。

…あ、社長は劉輝です。
長いな…


著:2008・6・8
UP:2008・9・14


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