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*ss*
Lovey-Dovey(現パロ)
君が今、隣に居ること。
ただそれだけで幸せ。







「……何だお前、さっきからニヤニヤと。気持ち悪いぞ」
「いや、別に。良い天気だなぁと思って。春だからかな?」
「お前の頭はいつだって春だろうが」
「またそんな、つれないことを言って。たまには恋人に優しくしてくれたって良いだろう?」
「なっ…!」


愛しい人が怒り出さぬうちに、楸瑛は素早く彼の手を握った。
反論の言葉を言わせずに、微笑う。


「久々のデートなんだから、これくらいは許してもらわないと」
「おまっ…誰かに見られたらどうするつもりだ」
「大丈夫。皆自分たちのことしか気にしてないからね。それに」


楸瑛はやっと辿り着いた目的地を指さして言った。


「この映画の価値が分かるのは、どうやら私たちだけみたいだから」
「残念な話だな。素晴らしい作品なのに」
「まぁまぁ。その代わり、貸し切りで観られるじゃないか」
「そうだな」


貸し切りという響きに魅せられたのか、愛しい人は嬉しそうに笑った。


「さ、チケットも買ったことだし、そろそろ入ろうか」
「あぁ。あとどのくらいで始まるんだ?」
「あと10分かな。何か買うかい?」
「いや、いい。映画に集中したい」
「そうだね」


レンタルして観ることだってできるような映画の、リバイバル上映をわざわざ観にくる程、二人はこの映画が好きだった。
その度に飲み物も何も買わず、映画に集中する様子はいかにも彼らしい。
そしていつだって彼は、やっぱりこの映画が好きだと興奮した様子で語る。

そんな可愛い表情(かお)で、私のことも好きだと言ってくれたら良いのに。


「おい、何をしている楸瑛。早く行くぞ」


焦れたような彼の声で我に返る。
そして彼によって繋がれた手に気づく。
あぁ―――…そういえばチケットを買うときに離したのだった。


「うん。でも絳攸、そっちにはトイレしかないよ?」

彼が迷ってしまわないように、その手をそっと握り返して、楸瑛は笑った。


「ほら。早くしないと始まってしまう」


彼の手を引いて、楸瑛は走り出した。


誰も居ない小さなシアターの、一番良い席を陣取ったら。
隣に座る君にキスをしよう。


君は怒るかもしれないけれど。









○●後書き的な。●○
ラブラブ双花映画デート!
個人的にはかなり甘め。
なんか…勢いだけで突っ走っちゃってツッコミ所多すぎ。
いや、手つないでたら見られるだろう…←
きっとこの二人が観たいのは洋画かなー。



著:2008・5・18
UP:2008・8・21


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