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彼は新世界の魔王になる
災いもたらす者達
【No side】

 鬱蒼(うっそう)とした森の中を複数の影が縦横無尽に駆けていく。
 赤銅色の顔まで覆った兜鎧姿の兵士達が、その重苦しい装備をものともせず、間者の如く素早い身のこなしで森を突き進む。
 一見乱れているような陣形だが、それぞれ絶妙な間合いを取っていることが優れた戦士ならばすぐにわかるだろう。
 こんな動きができるのは王族に使える精鋭部隊に他ならない。そんなエリート部隊が何故、遠く遥々ホーリーエルフの森へと派遣されたのか。
 
「隊長、魔光探知機が北北東から凄まじい星魔力を感知しました」
「やはりこの森に召喚されていたか。
全軍、各自二組に分かれ、北北東へ進路を取れ!
一刻も早く、我が国に仇なす魔王クロウレッド・テンぺスターの転生体を打ちとるのだー!!」
「は! インデウィア帝国の御旗の元に……!!」
『インデウィア帝国の御旗の元に!!!』

 国家への誓いの号令を掲げ、インデウィア軍は一路北北東を目指した。

 インデウィア軍が去った後、背後の木々の上から鋭く光る二つの眼が浮かび上がる。
 眼はインデウィア軍の進行方向に視線を流すと、面白がるように逆三日月形に眼を細めた。

「これはこれは、敵国の人間が雁首揃えてぞろぞろと……。なかなか面白い事になりそうだなぁ」

 昼間でも暗い森の中、橙色に輝く双眸がギラリと光る。ガリッガリッと爪を研ぐ音だけが不気味なほど響いていた。

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