獣神戦隊マイスマン
新たな敵
「貴様が……ダキニ」
「如何にも。その面と神気からするに、お主が天龍王の生まれ変わりじゃな？
ミラーシンマ相手ではお前達も物足りなかったであろうし、わらわ直々に遊んでやろう。
少々、手合わせ願おうか？」
言うが早いか、神速で眼前にいる輝夜に肉薄する。
「くっ……！」
瞬時に龍炎刃を抜き、ダキニの鉄扇を受け止める。
「ほほっ、流石は天龍王。腕は鈍っておらぬようじゃの。
だが、これが限界ではあるまい……のう？」
「ダキニッ、貴様ら一体何を企んでやがる!?」
「それを聞いたところでお主に何ができようぞ。
愚かにもこの地球(ほし)を蝕む人間どもを庇い、のさばらせる無能な神が」
「黙れっ!!」
ギィンと音を立て弾き返せば、するりと避けたダキニは舞うように扇を薙ぎ払う。
扇から放たれた風圧は刃となり、他のメンバーにまで及んだ。
咄嗟の判断が功を奏し、全員召喚した武器で直撃を免れる。
「この程度かお前達の力は？ 余興にしては面白くないのう……フフッ」
攻撃を仕掛けたくとも、矢継ぎ早に技を繰り出すダキニに防戦一方となる。
一際大きな斬撃を繰り出そうと、ダキニが鉄扇を振り上げた僅かな隙を逃さず勇人が動いた。
「獣と鳥の力、舐めんなよ。鳥人化！」
蒼い光と共に勇人の背中から光の翼が生えてきた。
ダキニに動く間も与えず、一瞬で彼女の眼と鼻の先に辿りつく。
「……っお主の神速、まさか鳥獣王(ちょうじゅうおう)か！」
「だったらどうした。怖気づいて逃げる気か？
それとも、この俺と空でスピード勝負しようってのか？」
挑発的な勇人の誘いにダキニは眉を跳ね上げる。
「見くびるでないぞ、鳥獣王いやマイスブルー！
月影桜花翔(げつえいおうかしょう)!!」
扇で弧を描くようクルリと舞うと、空間が闇に変わり激しい桜吹雪が渦を巻いて勇人に迫った。
「神風螺旋鷲撃!!」
力と力がせめぎ合う。蒼き風は嵐となり、黒い瘴気を纏う桜吹雪と絡みあっていく。
僅かにダキニが押したように思えたが、勇人以外の神気が圧し掛かりダキニの力を押し返した。
下を見れば、輝夜を始め全員が勇人の攻撃に助力していた。
「みんな、ブルーの攻撃に乗せてあいつを叩くぞ！」
『了解!!』
それを横目で見て、礼は言わねえぞと勇人が零す。
「む、これは他の守護獣神のか!?」
まずいのう。わらわも四天王一の速さを誇るが、相手が鳥獣王では分が悪いようじゃ。
しかも他の守護獣神、特に天龍王までおっては軽い怪我では済むまい。
「やれ、仕方ない。ここは退却するとしよう」
勇人達の攻撃があと少しで届くかという間際、ダキニは桜吹雪と共に消え失せた。
「おいっ、待ちやがれ狐女！」
仕留め損ねた悔しさに勇人は歯噛みする。 背中の羽を仕舞うと彼は緩やかに下降していった。
ふわりとアスファルトの上に降り立った勇人の元に輝夜達が駆け寄って来る。
「奴はどうなったんだい、ブルー？」
智史の問いかけに勇人は不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「尻尾巻いて逃げやがった。
くそっ、あと少しで仕留められたのによぉ！」
「残念だったわね。
ここで幹部を捉えることができれば、今後の戦いが有利に運んだかもしれないのに」
「まあ終わったことは仕方ないよ、ホワイト。
それに私達、これで二度…いやレッドのを含めると三度に渡って神魔を退けることができたんだよ。
次だってこの面子なら何があっても勝てるよ、絶対！」
世那の前向きな言葉にみんな元気をもらう。
向日葵のような明るさに輝夜はふっと微笑を浮かべた。
「そうだな、イエローの言う通りだ。
転生者が揃い、マイスマンとして覚醒した今の俺達なら何があっても大丈夫だしな。
改めてみんな、神魔を倒すまでよろしく頼むぜ！」
「勿論、親友の頼みなら当然のことさ！」
「水臭いこと言わないでよ、倒した後もよろしくだよ？」
「そうよ、レッド。今度は昼休みだけじゃなく、戦友としてもよろしくね」
「……言っておくが他の奴らと違って、俺は神魔との戦闘以外はてめえと馴れ合うつもりはねえからな」
皮肉っぽい態度を崩しもしない勇人に世那は呆れる。
「全く、一人空気読めてない奴がいるんだから」
「フンッ」
やれやれと肩を竦める四人だったが、遠くから一人の刑事が角から現れたことに気がついた。
遠山警部だ。
「おっおい、ブラック！ あの刑事って小学校にいた人じゃ…」
「拙いな、あの時も追いかけられたから早いとこ退散しないとっ」
「あぁぁっ、お願いだから気付かないでぇ！」
慌てだす輝夜達三人の願いも空しく、遠山の視線がこちらに向けられた。
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