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獣神戦隊マイスマン
闇の使者
 使われなくなって久しい町外れの倉庫。
 ドラム缶やコンテナなどがその辺一帯に置かれている。
 草木も眠る丑三つ時、月光のみが深い闇に覆われた内部を照らしていた。
 その一角に人の等身を映せる程の大きさをした古びた鏡が置かれている。
 ただ古いのではなく、学校の七不思議に出てもおかしくないような不気味さを漂わせていた。
 静寂の中、音も無くふわりと舞い降りたダキニは倉庫の中のその一点に眼を向ける。
 舞っているかのような足取りで鏡に近寄ると、そのまま顔を寄せ甘い声で囁きかけた。

「目覚めよ……ミラーシンマ。そなたの出番じゃ」

 囁きに応えるように鏡がきらりと瞬く。
 次の瞬間、鏡一面が漆黒に染まりその中央に人面が浮かび上がってきた。
 側面から腕が生え、底面からは足が二本伸びてくる。

「わたくし、ミラーシンマでございます!」

 妙に甲高い男声で神魔獣が名乗り出た。
 恭しく頭を下げるミラーシンマに満足したのか、鷹揚にダキニは頷く。

「さて、わらわがここへ来たのは他でもない。
ミラーシンマよ、陛下への供物を増やし、さらに未だ見つかっておらぬ守護獣神共をあぶり出すのじゃ!」
「はっ! 仰せのままに」

 忠誠を誓うように、深々とミラーシンマは頭を垂れた。

「ところでミラーシンマよ」

 調子の変わったダキニの声につられ、神魔獣は面を上げる。

「陛下への供物は如何した? アスラからはそちの中に封じておると耳にしたが」
「はい、アスラ様の仰られた通りでございます。
わたくしめの体内に異空間を作り上げ、その中に人間共を閉じ込めているのです。
今も中でギャアギャア泣き喚いておりますわ、クッククク……。御覧になられますか?」

 ミラーシンマが歪んだ嘲笑を浮かべると鏡面に波紋が生じ、捕らわれた誘拐事件の被害者達が映し出される。小学生から高校生まで一様に不安と恐怖から顔を歪ませていた。
 泣き叫ぶ声が鏡越しに聞こえてきたため、ダキニは苛立たしげに柳眉を逆立てる。

「もうよいっ、わらわは人間の泣き喚く声が大嫌いなのじゃ!! ほんに耳障りよのう!」
「こっ、これは失礼致しました! 不快なものを眼につかせてしまい申し訳ありませぬ……」

 ダキニの不興を買ったことに慌てたミラーシンマはすぐさま平身低頭する。
 不愉快さを隠しもせず、ダキニは荒々しく鉄扇を広げた。
 苛立ちで歪む口元を隠すように、扇で顔半分を覆う。

「……別に、気にしてはおらぬ。わらわからの指示は以上じゃ。
もし獣神どもが現れたなら、必ずわらわを呼べ。よいな?」
「は――っ!!」

 ミラーシンマが跪くのと同時に、ダキニは夜闇に溶け込むように姿を消した。


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あきゅろす。
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