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獣神戦隊マイスマン
僕のヒーロー
 翌日――

 いつも通りの時間に、優希は輝夜を見送りに玄関に向かった。
 玄関で靴を履き終わった輝夜は優希の足音を聞くといつものように振り返った。しかし、急に抱きしめられた上、心配するように優希の頭を撫ではじめた兄に優希は困惑する。

「かっ輝夜兄ちゃん? どうしたんだよ、急に」
「いや、無事でいてくれたことが信じられなくてな。本当に、良かった……」
「兄ちゃん……」

 無理もない。昨日の事件の事で、無関心な父と母、そしてあの嫌味な陽一でさえも優希が人質となったことにうろたえていたのだ。
 日頃から優希を可愛がっている輝夜がショックを受けるのは予想に難くなかった。
 思わず優希は考え込む。

 母さん達はともかく、輝夜兄ちゃんを心配させたままなのはやだな……。
 どうしたら、兄ちゃん安心してくれるだろう?
 あ……そうだ!
 
 優希の脳裏に紅蓮の焔を纏う一人の戦士が浮かんだ。

「ねえ兄ちゃん、もう心配しなくても大丈夫だよ! だってマイスマンが……マイスレッドがいるもの!!」
「優希、お前……」
「だから、安心してよ。逆に兄ちゃんに何かあった時はマイスマンが絶対助けてくれるよ!
ヒーローは弱き人を悪から救うためにやってくるって兄ちゃん言ってたじゃないか!」

 一瞬、優希の口から飛び出した内容に、珍しく輝夜はポカンと口を開けた。
 やがて思いがけないことを言ってもらえた嬉しさに、輝夜はふっと唇を綻ばせる。
 嬉しさと照れくささを誤魔化すようにガシガシと弟の頭を撫でくり回すと、輝夜の腕から逃れようと優希が暴れ出した。

「もうっ輝夜兄ちゃんのバカ! 心配して損した!」
「ハハッ悪りぃ悪りぃ。余りにも形のいい頭だったからつい……な」
「兄ちゃん!!」
「おぉっと! もうこんな時間かぁ。じゃっ行ってきまーす!」
「あ、こら逃げるな!」

 逃がすまいとして裸足で玄関に下りてくる弟から逃れるように、早々と輝夜は玄関を飛び出した。
 学生生活と戦士としての二重生活の幕開けに、密かにこれからの生活を考える。

 弟達には秘密だけど、平和のためにこれからも人知れず頑張りますか!
 ま、戦っている間の時給が欲しいのはやまやまなんだけどな。今度、相談してみるか。

 玄関から飛び出してまで怒鳴る優希に再び笑顔を向ける。
 弟が何故か固まっている間に、今度こそ輝夜は愛用自転車に乗って学校へと向かい始めた。
 黄金色に輝く空を美しいと感じられる日が来るとは。当たり前のことに幸せを感じながら、改めてマイスマンとして自分の使命を投げ出さぬよう心に誓う。
 陽光に照らされるアスファルトだけが、彼の勝利と誓いを称えるようにきらきらと輝いていた。




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あきゅろす。
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