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獣神戦隊マイスマン
温かい手
 徐々に優希の視界が狭まっていく。もう……駄目だと薄れゆく意識の中、廊下から飛んできた紅い光が視界の端を走った。
 光が通り過ぎると共に、優希の身体が床にくず折れる。
 傍には、少年の首を掴んでいた怪人の右手が転がっていた。

「ギイィィィ――!! お、俺の腕があぁ!」

 焼けるような激痛に吠える怪人を、さらに紅い稲妻が貫く。貫かれた箇所から激しく火花が散った。
 更なる攻撃を避けようと、慌てて優希の傍から離れる。

「そこまでだ、神魔!!」

 光線銃を構え、廊下から三色の戦士達が躍り出た。
 怪人こと神魔を牽制したのは紅いプロテクターを身に纏う戦士だった。
 ヒーローが持つ銃に似たものをしまい、すぐさま優希の傍へ駆け寄る。

 咳きこみながらもしっかり意識を保っていた彼は、自分の身体を支える紅い戦士を見つめた。
 龍を象るマスクからはその素顔を垣間見ることはできない。大好きな戦隊ヒーローに似たその姿に、彼の鼓動が跳ねあがる。

 まさか……まさか本当にいたの?
 悪者から助けてくれるヒーローが、テレビの中だけのヒーローが……!

 優希の動揺を知ってか知らずか、紅い戦士こと輝夜はふわりと彼の頭に手を置いた。
 例え見えなくとも、マスクの下で戦士が優しい表情を浮かべていることが、優希には何となくわかった。

「もう……大丈夫だぞ」

 低いが温かみのある声が少年を包みこむ。
 どこかで聞いたような声だったが、優希は何も考えず頷いただけだった。

「さあ、行くんだ!」
「ありがとう。……レッド!」

 しばし悩んだ末、優希は正体不明のヒーローをそう呼んだ。
 軽く頷き、優希が教室を出るのを見届ける。

「貴様らぁ……わしを無視するなあ!」

 怒声を上げる神魔を前に、再び輝夜達は向き直った。
 他の生徒と先生はすでに世那と智史が安全な場所に逃がしていた。

「おのれっ、奴らを逃がしおってぇぇー! ただでは済まさんぞお!」
「はっ! やれるもんならやってみろ、クソ神魔が! 優希を殺そうとした分、きっちり礼は返さねえとな!!」
「そうだ! 未来ある子供らと、それを支える教師を殺そうとした罪は大きいぞ!!」
「例え世のお偉いさん達が許しても、私達は絶対に許さないんだから!」
「むうぅ…っ」

 怒れる三人の気迫を前に神魔はうろたえる。輝夜達は一歩進み出て、右手を天に掲げた。

「勇猛なる炎の騎士、マイスレッド!」

 紅い閃光が背後から立ち上り、龍の眼に宿る。

「轟(とどろ)く大海の騎士、マイスブラック!」

 漆黒の閃光が輝き、玄武の眼に宿る。

「清浄なる光の騎士、マイスイエロー!」

 最後に黄色の閃光が輝き、麒麟の眼に宿った。

 右手のブレスが強く輝き出す。
 その手を前に突き出し、左手を腰の辺りで構えた。右足を力強く前に踏み出す、そして――。

「闇を切り裂く大いなる大志!」
『獣神戦隊マイスマン!!』

 名乗りを上げたマイスマンを前に、神魔獣は改めて驚愕に震える。

「ばっ馬鹿な、守護獣神だと!? 貴様ら、生きていたのか!
うぉのれえぇっ! ここでその憎っくき首、打ち落としてくれる!!」

 言うが早いか斬られた箇所から蔦状の触手が襲いかかって来た。
 瞬時に三方に分かれ、攻撃を避ける。窓を蹴破り、三人とも裏山の方へ走った。
 その後を執拗に神魔獣が追ってくる。

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あきゅろす。
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