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獣神戦隊マイスマン
優希の危機
 狭い教室の中、九十二歳までの子供らが担任の青年と身を寄せ合い息を殺す。
 廊下側の窓には黒い異形の影がガシャンガシャンと不気味な金属音を立て、教室の前を通り過ぎようとしていた。
 夕日が教室内を照らし、彼らの焦燥に駆られる顔を赤く染める。
 その中に、輝夜の義弟、優希はいた。友人と共にガチガチ鳴りそうな歯を噛み締め恐怖を押し殺す。
 影は一定の速度で、教室の後ろ扉付近へ近づいてきている。

 あともう少しだ。ここで気付かれなければ、生きて帰れる!

 僅かながらの希望を掛け、皆祈るしかなかった。
 影が教室の後方扉前まで来たとき、足音が止まった。一気に教室内の緊張が膨れ上がる。

 無情にも彼らの願いは届かなかった。
 影から陰惨な嘲笑が漏れる。その声は教室中に木霊し空気を震わせた。
 馬鹿な、あの化け物は外にいるはず。
 しかし聞く者の背筋を凍らせる嗤い声は中で響いているのだ。
 突然、ぴたりと嗤い声が止んだ。
 爆音と共に扉が吹き飛ばされる。黒焦げになった扉は砕け散り、入って来た怪人によって跡形もなく踏みつぶされた。

「ひいぃっ!」

 優希の後ろの同級生が悲鳴を上げた。
 上級生達も絶望を映す暗い眼で力なく化け物を見る。

 僕達もこんなふうにされてしまうのか……。

 原型すら残さぬ扉だったものの残骸に眼を移し、優希は異常な恐怖を前に身体を固くする。
 全員が絶望に打ちひしがれる中、怪人は不調和な金属音を立てて迫ってきた。
 トカゲを模した姿に半分以上が機械化された身体。鋭い鉤爪は足と同じく白金で覆われ、軽く腕を振るだけで簡単に人の首を落とせるだろう。
 不意に怪人は右手からチェーンを伸ばし、優希を捕らえた。

「藤堂!」
「ゆうきぃ――!!」

 成す術もなく捕らわれてしまった少年を前に、教師と子供らは叫ぶことしかできなかった。
 無力な人間を嘲笑いながら、トカゲ怪人は少年の首を締めあげる。

「ううぅっ……」
「やめろおおぉぉ――!!」

 ギリギリと音を立て締め上げられる生徒を前に、青年教師が立ち上がった。
 震える手で箒を握り締め、雄叫びを上げながら特攻をかける。

「邪魔だ、人間風情があ!」
「があぁっ!」

 箒で叩きつけるも身体ごと片手で持ち上げられ、壁に思いっきり叩きつけられてしまった。
 衝撃で強く打ったからか、力なくうずくまることしかできない。

「先生!!」
「騒ぐな、小僧ども! 焦らずとも、一人一人ゆっくり首を落としてやる。
人間と言う種を絶滅させるには、ガキを殺るのが手っ取り早いからなぁ。
手始めは……こいつだ!」

 人間達の恐怖する様を楽しむように、怪人は優希の首を落とそうと一気に力を込めた。

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あきゅろす。
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