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猫の守護神さま!
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「っ……ふざけんな! あんた、自分の立場わかってんのかよ!?
あんたを慕ってんのは今ここにいる連中ぐらいで、他はどっちつかず。更にその他は、あんたに制裁と強姦を邪魔された恨み辛みを持ってる連中だけなんだぜ。
つまり殆どの生徒が俺達側だってことだ」
「だから? その大多数の生徒さんの力を借りなきゃ、君は自分の正当性すら訴えることができないんだね。
やっぱり君は臆病者だよ、鹿島。そろそろ君自身の力で僕と会長に物申してみたらどうなんだい」

 淀むことなく言いきると、初めて鹿島の眼に揺らぎが生じる。

「俺は……何も間違ってなんかいない。悪いのは会長じゃないかっ、俺達を見てくれなかった会長が。
クロ丸だって同罪だ。そんな会長の味方をして、那智を傷つけたんだから」

 ぶつぶつと額を抑えながら呟くその様子の尋常(じんじょう)さに、俺は解せないものを感じ取った。
 まるで誰かに植え付けられた思想を繰り返し述べているような違和感。
 森ノ宮のいる前で容易な行動をとるべきではないのはわかっている。だが、様子のおかしい鹿島を放っておくことは俺にはできなかった。
 いけないと思いつつ、俺の足は鹿島の方へ一歩踏み出す。そして、そっと広い額に手を当てた。
 びくりと鹿島の肩が揺れる。
 何故かその様が幼子のように映ってしまい、気付いた時にはこう口にしていた。

「大丈夫かい? 顔色悪そうだけど、かなり無理してないか?」

 その時だった。彼の額の方から黒い霧のようなものが出て行ったのは。
 同時に、鹿島の眼から俺への敵意にも似た殺意の色が消えていることに気付く。

「何で、あんた俺のこと……」

 代わりにその口から洩れるのは困惑の色を乗せた声だ。

「武、大丈夫か!? クロ丸っ、さっさと武から離れろよ!!」

 叫ぶやいなや、いきなり俺を突き飛ばす森ノ宮に鹿島の困惑は一層深まる。
 周囲の生徒達は大ブーイングだ。

「てめえ、森ノ宮!
クロ丸仮面に何てことしやがる!!」
「そうだよ、むしろ鹿島様のこと心配してただけじゃない!いきなり突き飛ばすなんて信じられないっ!!」

 口々に上がる怒号に、森ノ宮はただ煩く喚き出す。

「煩い! こいつは危険な超能力者なんだぞ!?
さっきだって、絶対何か武にしたに違いないんだ!
ほらっ、武。早くクロ丸仮面から離れるんだ!」

 どこか焦りを垣間見せながら、森ノ宮は強引に鹿島の手を引きだした。

「龍牙と統矢も早く行くぞ! ほら!!」

 少し離れた所にいた二人に、苛立ちながら森ノ宮は呼びかける。
 様子の変わった森ノ宮に戸惑うも、石清水だけは他の取り巻き同様、気遣いを見せながらやってきた。
 貴船だけはそこを動かずに。

「どうしたんだ、龍牙? 龍牙もこっち来いよ!」
「悪いが那智、少しばかり確かめたいことができたんで俺は残らせてもらう」
「た、確かめたいことって何だよ。俺よりも大事なことなのか?」

 珍しく弱弱しげに森ノ宮が尋ねる。
 それに気付いているだろうに、何故か貴船は慰める素振りも見せず俺に視線を向けたままだ。
 それを眼にした森ノ宮がまたしても俺を憎々しげに睨みつけてきた。
 だが貴船の機嫌を損ねたくないのか、本性を隠しておきたいのか、森ノ宮はいつものような底抜けに明るい笑顔で貴船に向き直る。

「わかった! なるだけ早く帰ってこいよな!
龍牙がいないと寂しいんだから……」

 そう言い置いて、森ノ宮は貴船に嫉妬の焔を燃やす他の取り巻き達に今度は笑い掛けた。
 石清水と八王子、春輝はそれだけで安心する。
 誰にでも公平に接しているだけ、ただの友達感覚だと。
 傍から見てる俺にでもわかるほど、彼らの思考回路は一目了然だ。
 森ノ宮は一度挑発的な視線を俺に向けた後、彼らを引き連れこの場を離れて行った。
 ようやく森ノ宮の声すら聞こえなくなった頃に、今まで不気味な程に大人しくしていた貴船から獰猛な気が漏れ出す。
 不覚なことに、気付いたときには獅子の如き俊敏さで俺の胸倉を捕らえられた後だった。
 側で見ていた大神がヒューと口笛を吹く。

「いきなりっ、何するのだ!」
「ちょいとばかりお前に聞きたいことができた。
大人しくついてこい」
「嫌だと言ったら?」

 そう返すことすら予測済みだったのか、嫌みな笑みを顔一杯に広げる。

「実力行使あるのみ」

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あきゅろす。
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