白雪姫04
返事を面倒くさがる鏡
コウ姫は小さい頃からたいそうかわいらしい王女でしたが、大きくなるにつれて更に美しくなりました。
しみひとつない純白の肌はそのままで、少し大人びた顔は光に満ちあふれていました。
あるとき、ナティア王妃は鏡にたずねました。
「鏡よ鏡。この国で一番美しいのはだあれ」
しかし、鏡はなにも答えません。
「……ちょっと、聞いてるの?」
『はい?』
「聞こえてるなら返事くらいしなさいよね!」
『なんか……もう面倒で』
「きいっ!」
ヒステリックな王妃に手を焼いていた鏡は、そのヒスが更に増すことを恐れたのです。
だって鏡は何でもお見通しでしたから。
この国で一番綺麗なのは、王妃ではないということも。
「で、一番きれいなのは?」
『言ってもキレないと仰るなら答えますけど?』
「そこまで言ったなら全部言っちゃいなさいよね!」
鏡は呆れたように溜息を吐きました。
『確かに数年前までは王妃様、あなたがこの国一の美女だったかもしれません。ですが時代は移り行くもの……永遠のスターなどこの世に存在しないのです』
「だから何が言いたいわけ!?」
『──コウ姫。
美しさで彼女に勝るものはこの世におりません』
これを聞いて、ナティア王妃の顔は青ざめました。まさか自分の義娘に負けるとは思ってもみなかったのです。
王妃はたいへん悔しくなりました。
憎しみは日に日に募り、どうしようもない不安にかられていました。
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