白雪姫02
仲良しな母と娘
とても寒い冬のことでした。
まっ白な雪がひらひらと空から舞い落ちてきました。雪は薄くて小さかったので、直ぐに溶けて消えました。
それをくり返していくうちに、いつの間にか外はまっ白になりました。
凍えるような寒さのなか、カーテンを開けて外を眺めているお妃がいました。お妃は古い木枠のついた窓際に腰をおろして針仕事をしていました。
お妃はとても手先が器用でした。ドレスを縫うことも、セーターを編むことも、アクセサリを作ることも大好きでした。
ですので、お妃は、いつか我が子に似合うドレスやセーターをつくりたいと考えていました。
縫い物をしながら外を眺めていたものですから、お妃の指に針が刺さってしまいました。真っ赤な血のしずくが三滴、雪の上に落ちました。
血の赤と、雪の白さがとても美しく見えたので、お妃はふとこんなことを考えました。
「この雪のようにまっ白で、この血のように赤く、そしてこの窓枠の古木のように見事な琥珀の子どもが、わたしから生まれたらいいのに」
きっと真っ赤なドレスが似合うのでしょうねと、お妃は期待を胸に針仕事続けました。
+++++
それから一年後、お妃はかわいらしい女の子を生みました。
生まれた王女は雪のように白い肌で、血のように赤い頬や唇をして、古木のわくのように美しい琥珀の瞳をしていました。
この王女はコウ姫と呼ばれました。
お妃はコウ姫をたいそうかわいがりました。かねてからの望みどおり、真っ赤なドレスを作り、まだ幼い姫に着せては眺めて楽しんでおりました。
はじめの頃はなにも口答えをしなかったコウ姫ですが、そのうちに、物心がつくようになると、お妃の執着振りに嫌気がさしてきました。
「エリザお母様、着せ替えごっこはもう嫌です」
「まあ、何を言うのコウ。かわいいかわいい私の子ども。次は真っ黒なドレスとピンクのセーター、黄金の首飾りを作りましょうね」
「絶対にいやです」
真っ赤な唇はとてもかわいらしいのですが、その口から発せられる言葉はお妃の想像していたものとは少し違っていたようです。
お妃は悲しみました。
ところが、悲しみに泣きくれるかと思えば、お妃は決して意見を曲げませんでした。
「イヤイヤしてもだめよ、コウちゃん。お母様はコウちゃんにぴったりの服を作るのが大好きなの。生きがいなのよ」
「そんなこと知りません」
「さあ、サイズを測りなおしましょうね。あら、少しお胸が大きくなったんじゃない?」
「……え。ほんと?」
「はい、採寸終わり。これでまた新しいドレスが作れるわあ」
しまった、と冷や汗を流すコウ姫の傍らで、お妃は楽しそうに服作りをしていました。
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