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白雪姫おまけ3


 舞台裏B


『なんで私とあいつの出番数がこんなに違うんだ』

 ぷりぷりと怒っているのは小鳥のルーンだった。

 あいつ、というのは勿論、何気に出番の多かった鏡役のカルディアロスである。

『私に言われましてもね、そういう配役になったのですから。フェザールーン、お前に鏡役が務まりますか?』

『私だって出来るぞ!』

 ルーンは威張って言うが、小鳥サイズなのでちっとも恐くない。むしろ可愛かった。

『というか白雪姫に出てくる鏡はもっと正直なやつだったぞ!?』

『おや、私も十分正直者ですよ』

『お……お前が言うとなんか胡散臭いんだよなあ』

 ルーンは苦虫を噛んだような顔をした。

『気づいていないかも知れませんが、お話の中で語られていないだけで、姫が棺に入っている間はずっと彼女の傍にいたのでしょう。傍に居られるだけましだと思いますよ』

『う、うーむ。そうか?』

 そうそう、とカルディアロスは頷いた。

『私など、姫への情熱を語る場もなく、その思いをさり気無く野獣に言ってもらったりと、そんな小細工をしなければならなかったのですから』

『それも、そうだよなあ』

 だんだん彼のペースにはまってしまっていることを、ルーンは気づいていない。

『実は一度もコウの本物を生で見たことがないんですよね、鏡は。あんな意地の悪い女に連れられて、何度も同じことを繰り返して……ああ、面倒すぎますね』

『……そっか』

 少し肌寒くなってきたルーンは、遠慮がちに羽ばたいて、そのまま逃げてしまった。




『面倒ですが……何でも知っているということは、何でも見られるということです。いつでも、どこでも、彼女が何をしていようと、この目に焼き付けられるのはなかなか良いものですよ、フェザールーン』

 おっと、もう行ってしまいましたか、とわざとらしくおどけて見せたあと、カルディアロスはお世話になった鏡の表面を優しく撫でた。


『鏡よ鏡。この国で、いや、この世界で一番美しいのは……コウしかありえません。

 そうですよね……?』



 舞台裏B 終


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