白雪姫15
王子様、ご来訪
あるとき、どこかの国の王子が森にやってきました。彼は七人の小人の家に訪れ、ここら辺に珍しい野獣はいないかとたずねてきました。
「珍しい野獣といえば、森には銀色に輝く生意気な野獣がいたね」
「そうか。いや、ありがとう」
あっさり去ろうとした王子を、小人たちは引き止めました。
「貴方は何をしにここへやって来たのですか?」
すると王子は銀の弓を取り出し、こう答えました。
「野獣を狩りに」
「ええ? 銀の野獣を殺すのですか?」
「いや。……ああ、この弓は、まあ気分的なものだ。本当にこれで狩るわけではないよ。そうか、銀の野獣とは本当に珍しい。一度見てみたいものだ」
それなら、銀の野獣は山の上にずっとおります、と小人たちは答えました。
「珍獣が、ずっと一所に留まっているとはどういうことだ」
それから、小人たちは今までの出来事を話しました。銀の野獣がずっといるという、山の上には何があるのか、それも全て話しました。
すると王子は話の中に出てきたコウ姫にたいへん興味をもちました。
「銀の野獣を見るついでに、その姫も覗いていこうか」
王子は即決すると、そのまま山の上に向かいました。何か心配だった小人たちは、王子の後を付いて行きました。
山の上に辿り着いた王子は、ガラスの棺の中で眠るコウ姫を見て「これは驚いた」と溜息を溢しました。
雪のように白く、血のように赤く、そして瞼の奥には見事な琥珀色が潜んでいるのだと聞いて、王子はこの姫が欲しくなり、いてもたってもいられなくなりました。
「小人たち、この姫を私にくれないだろうか」
「それは……構いませんが、私の妹が何と言うか」
眼鏡の小人はしどろもどろに言いました。すると棺の傍で泣いていた、例の妹が猛スピードでやってきて、叫びました。
「あなたなんかにコウ姫をあげるわけないでしょ! さっさと国に帰りなさいよっ、このドスケベ!」
「酷い言われようだな。私は本気でこの娘を嫁にと思っているんだが」
「だって死体と結婚するなんて絶対おかしいでしょう!」
「そうでもないさ」
有無をいわせない勢いで王子は棺を持ち上げました。
「ちょっと! 勝手に触らないで!」
そうして、王子と小人が棺を取り合っていると、お互いの手が滑って棺が地面に落ちてしまいました。
「「あ」」
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