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白雪姫14


 それでもあなたは美しい


 その日の夕方、小屋に戻った小人たちは倒れているコウ姫を見つけました。体はもうすっかり冷たくなっていて、息すらしていませんでした。死んでしまったのです。

 きっとまた毒の所為だろうと周囲をくまなく探しました。けれどそれらしきものは見つかりません。

 みんながどんなに思考を凝らしても、コウ姫を生き返らせることはできませんでした。

「そんな……コウ。いやよっ、死んではいやーっ!!」

 いつも気丈で高慢ちきな小人が大声で泣きました。涙はいつまでもかれません。いつまでも、いつまでも、泣き続けました。

「気持ちはわかるけどね……いつまでもこのままじゃコウ姫がかわいそうだよ」

 兄に言われて、泣いていた小人は目を鋭くして立ち上がりました。

「いや! この子を土の中に埋めてしまうなんて!」

「ではどうすると言うんだい?」

「このまま、ずっとこのままで棺に入れておくのよ。壁はガラスにして、いつでもこの子が見られるようにするの」

 泣きながら訴えるものですから、眼鏡の小人も困って言葉を失くしました。

 はじめはみんな「そんなことはやめておけ」と言いましたが、何日経っても衰えないコウ姫の美しさに感嘆しました。

「あの綺麗な琥珀の瞳は見られないけれど、それでも雪のようにまっ白な肌と、血のように赤い頬は変わらないんだな」

 男勝りな小人がそう言うと、みんなは深くうなずきました。

 そこで、小人たちはコウ姫をガラスの棺に入れ、金の文字で名前と、王女であることを書きました。

 棺を山の上に置き、一番に太陽の光を浴びて、たくさんの月明かりが降りそそぐようにしました。

 毎日、必ず誰かひとりが棺の傍にいました。七人の中でも毎日傍にいたのは、彼女の死を散々嘆いていた高飛車な小人でした。

 棺の傍には森の動物たちも寄ってきました。毎日コウ姫と話をしていた小鳥や、銀の野獣も来ていました。

 ふさふさの金の苔の上に置かれた、ガラスの棺の中で、コウ姫はまるで眠っているようにいつまでも美しいままでした。



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あきゅろす。
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