白雪姫10
居候
「ここにいても構わないんだよ」
そう言った眼鏡の小人は「ただし」と続けました。
「条件があるからね。君は言わば居候だ。炊事洗濯掃除……家事全般をきっちりやってもらうよ」
このとき眼鏡がちらりと光ったのを、コウは見逃しませんでした。
「つまり使用人というわけね。いいわよ、どうせ行く宛てもないし」
多少投げやりでしたが、コウは小人の提案にのりました。
こうして毎日、コウは食事の用意や部屋の掃除に明け暮れました。
ときどき、炭山へ出かけたきりだった高飛車な小人が戻ってきて様子を見たあと、また直ぐに出かけてしまいました。
彼女なりに気を使っているんだろうと、嬉しくなったコウですが、本当はコウがいそいそと働いている姿が見たかっただけでした。
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そのころお城では、コウ姫は死んだとばかり思っていたナティア王妃が嬉しそうに鏡に問いかけていました。
「鏡よ鏡。この国で一番きれいなのはだあれ」
すると鏡は答えました。
『まだ飽きないんですか、まったく。ですから、この城ではあなたが一番だと言ったでしょう。けれど……そうですね、あの山の上の、七人の小人とかいう胡散臭い連中がいるところのコウ姫は……あなたの比にならないくらい美しい』
「なっ、なんですってーっ!?」
ナティア王妃の声は城中に響き渡りました。
「あ、あの子が生きてた……? 猟師め、あの役立たず!」
王妃は驚きと同時に、悔しくて仕方がありませんでした。自分が一番でないと気が済まないのです。
「なんとかして、あの子を……」
王妃は立ち上がり、城の隅の汚い場所へ向かいました。顔に泥を塗り、年をとった物売りの女になりすましたのです。あの美しい王妃とは思えませんでした。
王妃は七つの山を越えて、七人の小人のことろへ行きました。
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