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白雪姫07


 銀の野獣


 コウ姫は、はじめこそ気丈に振舞っていましたが、そのうちに心細くなり、薄暗い森の中がこわくてこわくてたまらなくなりました。

 途方に暮れて走り出したコウ姫の前に、野獣が現れました。

『何だお前、まずそうだな』

 野獣の羽は銀色に輝いていました。

『ああ、お前がコウ姫か。めずらしく鏡が絶賛するものだから一度見てみたいと思ってたんだけど……ま、普通だな』

 それから野獣は散々嫌味を言って、すっきりしたあと、『じゃあな』と言って去ってしまいました。


 生意気な野獣に腹を立てたコウは、どんどん森の奥へ進んでいきました。



 もう日が暮れてしまうころになって、ようやく小さな家を見つけました。

「ちょっと休ませてもらおうかな……」

 コウが家の中に入ると、なにもかも小さいものばかりで驚きました。ですがそのひとつひとつは繊細な装飾がなされていたものばかりでした。

「素敵! こういうの大すき! あら、食事の用意ができているわ」

 小さなテーブルには、小さな皿が七枚並べられていました。瑞々しい野菜と、香ばしいパンに誘われて、お腹のすいていたコウは我慢できなくなりました。

「どうしよう。全部食べるのは気が引けちゃうもの。少しずつもらおうかしら」

 コウは小皿のひとつひとつから少しずつのパンと野菜を食べ、コップのひとつひとつから一滴ずつぶどう酒を飲みました。

 お腹がいっぱいになったコウは、並べられた七つのベッドのひとつに寝転がりました。

「……これ、大きすぎて落ち着かないわ」

 やけにでかいベッドから降りて、別のベッドに入ったコウですが、それもどこか感じが違いました。

 最早サイズの問題ではありません。

 枕元に何か危険そうなカラクリが置いてあったり、女性の長い髪が落ちていたり、炎で焼け焦げていたり、殴ったあとがあったり、布団の下にナイフが隠されていたりもしました。

「変な人たちなのね、きっと」

 そうして、最後のベッドに寝たとき何の違和感も感じなかったので、コウはいつの間にか眠ってしまっていました。




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