白雪姫06
天パの猪と厳ついコック
ぼんやりしていた猟師の前に、猪が一匹、飛び出してきました。猪にしては、背中の毛も尾もくねくねと曲がっておりました。
天然パーマの猪とは妙だと猟師は思いましたが、彼にとってそれはもはやどうでもいいことでした。
「ああそうだ。こいつを殺して肺と肝臓を取り出せば……」
「うわーっ! ちょ、何こわいこと言ってるんだよ、旦那! 俺は森の道案内人だぜ? 殺すのはちーと待ってくれ!」
「どうでもいいな」
「わーわー刀振り回すな! あぶねぇよ!」
「ちょこまかと……」
「舌打ちすんな! えーと、肺と肝臓だっけか? ほれ、朝市で仕入れた豚のがあるから、これで勘弁してくれ」
「……いくらだ」
「20000円」
「高い。殺す」
「わーっうそ! 1300円でいいから!」
こういうわけで、猟師は豚の肺と肝臓を城に持ち帰りました。
さすがに臓器の調理は出来ないので、コックに頼むことにしました。
「……なに? 肺と肝臓を調理しろだと? ずいぶんな珍味マニアだな」
コックは真っ黒な髪をしておりました。とても厳つい顔つきで猟師を睨むと、「一時間待て」と言い残して調理場に入って行きました。
コックの傍らには小柄な少女が助手としていました。
他にも何人か、コックのくせに分厚い本を読んでいたり、鎌を振り回したり、剣の稽古をしていましたが、それらに突っ込む気力のなかった猟師は全てを無視しました。
出来上がった料理をナティア王妃に渡すと、とても嬉しそうな顔をして全て食べてしまいました。
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