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もしもカルロが人間だったら2 


 ティレニア機関で講師を勤める若き男、カルディアロス。愛称カルロ先生。この呼び名に関して本人の了承は未だない。
 彼は何年も人と深く接さず生きてきた。別に特別な理由がある訳ではない。ただ、面倒なだけ。
 彼はそういう性格の持ち主だった。

 そんな彼の住みかと化した怪しげな研究室。そこを偶然(というか勘違いで)尋ねてきた一人の少女、コウ。
 彼女はとても元気で、真っ直ぐで、笑顔が可愛くて……。正にカルロ先生とは正反対な人間だった。

 そんな降ってわいた事件から数日後、再び出会いがおとずれた。


 ――――ガラッ


「カルロ先生!」

『――――』

 カルロはいつも通り無言だった。

「カルロ先生、無視しないで下さい!」

『――君、ここは魔導科だと言ったでしょう。剣術ならレッド先生に頼みなさい』

 コウは躊躇いながら言った。

「だって……レッド先生は――」

『どうしました?』

 いつも元気な彼女の顔が突然曇るものだから、カルロもおや? と不思議がる。
 ――すると。

「どこに居るんだマイスイートハニ――っ! 僕のかわい子ちゃ――ん!」

「あっ!!!」

「ん? ああ――! コウちゃんそんな所に居たのか――い!?」

「ああ”――――!! 来たぁぁ――――!!」

 コウは叫んだ。大変迷惑そうな顔をしながら。
 しかしこの中で誰よりも不機嫌なのはカルロ先生に間違いなし。けたたましい雄叫びを聞かされて、今も苛々している。

『何ですか。煩いですね』

「レッド先生来ちゃったよ! どうしよう!」

『は? ちょうど良いでしょう。彼に習ったら……』

「この間行きました! そしたら……」

 コウが言いかけたとき、レッド先生が躊躇無くカルロ先生の研究室に入ってきた。
 カルロの眉が下がる。

「君の剣舞は素晴らしい! 幾千の屍を踏み越える強さ、血も滴るいい女とは君の事だよ!」

「やめて! 心底気持ち悪いから!」

「そんな釣れない事言うなよハニー、またこの間の様に10時間でも100時間でも剣の打ち合いをしようっ」

「絶っ対嫌です! あの後筋肉痛と過労でぶっ倒れたんですからね!? 散々な思いしたんだからっ」

 この間、とはレッド先生に剣術を習いに行った時の事で、その時コウは思いもしなかった。レッド先生が惚れた太刀筋の人間に異常な興味を示すなんて。
 つまりコウはレッド先生に気に入られた訳で、それはとっても嬉しくなかった。

「もういや――――っ!!」

 コウは脱兎の如く走り、研究室から出て行った。それを夢中で追いかけるレッド先生。廊下に「待っておくれよ僕の白鷺――vV」という迷惑な告白が響いた。


『…………何なんですかね、まったく……』


 カルロは溜息を溢した後、静かに扉を閉めた。
 そしてまた、怪しげな研究を続ける。






[完]07.11.23


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あきゅろす。
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