薔薇の心 中編
サラは周りの奴等をどんどん追い抜き、ここでも優等生と呼ばれるようになった。別に嫌ではなかったけど、バカにされてるようで少々腹が立つ時もあった。
軍人になるためにここまで来たのよ? 頑張って当たり前じゃない……! そう言い聞かせていた。
サラは炎の精霊と契約し、多くの技を研いた。バトルルームだって、誰よりもこなしていた。
「……あら? あの子、この間の遅刻魔……こんなところで何してるのかしら」
それは自室へ戻ろうとした時のことだった。同級生だし、挨拶くらいはしておこうかな……。サラはそれくらいの気持ちだった。
だったけど……
「何やってるの?」
「あ、っと……適性検査を受けに行こうかなって……」
は――!? まだ自分が何の職に就くか決めてないわけ――!?
何なのこの子、そのくせ余裕ぶってるし……
「あなた才能ないのね、可愛そう」
後ろにいた、大して仲良くないけど同じ炎を習ってるから一緒にいる、ナティアがコウにそう言った。
私もそう思ったわ。だけど本人の前では普通言わないわね。
「そうなのよ」
――え? 言い返さないの? こんなに馬鹿にされて、黙ってるどころか肯定!? 普通は怒るでしょう!?
なんて私の方が腹立ててたけど、何だかあの子……少しだけさっきと空気が変わった。静かに怒りを抑えてるような……
この時不覚にも、私はコウに興味を持ってしまった。
初級試験も簡単にクリア。機関を自由に通過できるパスももらった。炎使いの魔導師として登録して、依頼も何件かこなした。
全て順調。
周りはまだ四苦八苦してるみたいだけど、こんなの余裕よ。
……そういえばあの子……コウはどうしてるのかしら……?
そんな時、たまたま中庭の近くを通ったサラは、大きな木の下でキョロキョロしているコウを見付けた。
何やってんの? あの子。無視することもないか。話かけてみようかな……。
「え!? まだ一つも合格してない!!?」
この子ったら何考えてんのかしら! あと少ししたら一番大事な"本試験"があるっていうのに……何でこんなに余裕ぶっこいてんのっ!?
私は無理矢理コウに試験を受けさせた。
――そして、勝ったのだ。あのレッド先生に。
「すごいじゃないっ! コウ!」
サラは思わず抱きついてしまった。後になって、結構恥ずかしい事したなって思う。抱きついた事もだけど、無理矢理試験受けさせるなんて……コウにはコウのペースがあるのに……
それでもコウは怒ったりしなかった。迷惑そうにもしない。コウは……「ありがとう」なんて言ったの。
不思議……私の心が少し浮いた感じ。ふわふわって……軽くなったみたいなの。
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