薔薇の心 前編
お兄様……
私は立派な魔導師になります。
お兄様の様に強くなりたいんです……
「薔薇の心」
※第1部を先に読まれる事をお勧めします。一連の出来事に対するサラの独り言がメインです。
「お兄様、私は立派な魔導師になりますっ! お兄様の様に強くなりたいんです!」
そう心に決めたのは、サラが7つの時だった。
6つ上のヘルト兄は、10歳の時に氷の精霊と契約し、その2年後には魔導師の国家資格を取った。国家資格は非常に需要が少なく、その上どの国からも必要とされていたため、色々な所から誘いが来ていた。
もちろん帝国フィルメントからも軍への入隊が期待されていたけれど、兄はそれを断って、今は西国で精霊の研究をしている。
子ども心に不思議だったサラは、一度理由を聞いた事があった……。
「兄様、どうして帝国へ行かないのですか? 帝国がお嫌いなのですか?」
「サラは帝国が好きかい?」
「ん――」
「ははっ、まだわからないよね? サラ、僕は帝国が嫌いなわけじゃないんだ。ただ、僕にはやるべき事があるからね。軍人にはなれないんだよ」
「やるべき事……この西国でですか?」
「そう、サラは覚えているかな? サラがうんと小さかった頃、南大陸にあるティレニアに住んでいたんだよ」
サラは微かな記憶の欠片を必死でたぐりよせてみたが、思い出すには至らなかった様だ。
「覚えてないか……まだ3つだったもんな」
「4年前……お母様がご病気で亡くなられた時」
「うん、母様はね、とても素晴らしい魔導師だったんだ。だけど軍には入らなかった……それは母様にもやるべき事があったからなんだ。僕はそれを受け継いだ」
「……兄様が軍人になれないのでしたら、私がなります……」
「サラ……?」
「お兄様、私は立派な魔導師になりますっ! お兄様の様に強くなりたいんです!」
++++++++++
あれから13年……
西国の街にある魔法学校で精霊について学び、学年首席で卒業したサラは、ついにこのティレニア軍事機関へ入学した。
兄様の様に強くなりたい、お役に立ちたい……。その一心でここまで頑張ってきたのだ。
――なのに、いざ入ってみれば、周りは金を積んで入った坊ちゃんや意味も良く分からず有名なだけで入ってきた馬鹿男、金持ち目当てのチャラ女に、ここまで来て「僕は戦いたくない」とか言ってる甘ちゃんまで勢揃い……。
これが……天下の軍人養成学校なの? こんな奴等と一緒にされちゃたまんないわ! と、サラが思うのも当然だった。
――ガラッ
「すいませんっ」
「貴方! 遅刻ですよ!」
「うわっ……」
その上遅刻!? 信っじられない! こんな大事な日に遅れてくるなんてっ。なんか、へらへらしてて弱そう。ここがどこか分かってんのかしら……。
それがコウとの出会いだった。
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