カルロと休日
それはある休日のこと。
軍事訓練もないし、特にやることもなかったので、コウはカルロを散歩に誘った。といっても、フィナの町にある静かな公園なのだけど。(ルーンは引きこもり)
カルロは本当に可愛いと思う。ふわふわで、小さくて、とても愛らしい。そんな動物と一緒に散歩、加えてこのお日様陽気。二人っきりで静かに過ごせるなんて、幸せだなあ……
――は!? いけない……! 今、おもいっきり力抜いてた!
こ……これはまずい……まさか……
たった今、コウは精神の制御をすっかり忘れていた。周囲に大量に精神力を放ったような気がして、不安に襲われる。が、確かめないわけにはいかない。
私はちらり、と横を見た。そこには、金の糸を垂らす美しい青年がいた。
ああああ! やっぱり……カルロが人型になってるよ! とりあえず周りに人が居なくてよかった……。
誰にも見られていなかったことに、一先ず安堵する私。でも、問題は何も解決していない。カルロは人型になるのが嫌いらしい。あんなに綺麗なのに、私には理解できない。でも、彼は嫌なんだろうから、きっと今も凄い形相で睨んでるんだろうな。
──ああ! 予想通りものすっごく睨んでますよ。こっちを恐ろしい形相で睨んでますよ──!
コウは心の中でそう叫んだ。これから延々と小言を聞かされる……そう覚悟していたら、意外にも何も言ってはこなかった。
どうして? いつものイヤミが飛んでこない。文句の一つも言わないなんて……どうしたんだろう。
コウが言葉に躊躇っていると、カルロの方から話しかけてきた。それはそれは小さく消えうせそうな声で。
『こちらの姿の方が貴方とお似合いですから……』
──私とお似合い──
人間である私と、普段は動物の姿をしているカルロ。本当は、気にしてたんだ。
ちょっと……嬉しいかも。
──と、調子に乗って手を繋いでみると、見事に嫌がられた。
もう! この照れ屋さん!
[完]07.10.12
前へ←次へ→
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!