守護神の日常
帝国主力部隊「聖軍」には、皆から恐れられる集団があった。彼らは大変優れた戦闘能力を持ち、聖軍総指揮官カイリ=エディンを護る「守護神」と呼ばれ、誰からも敬われてきた。
そんな彼らの日常とは──。
ガイア「──はい、チェックメイト。僕の勝ちだね」
シェーン「む。たんま」
ガイア「待った無し、って言ったの君だよね、シェーン」
シェーン「いや、撤回する。待った」
ガイア「だから嫌だってば。それにどうせ何度やっても結果は同じだよ」
シェーン「何だと貴様っ……この勝負は絶対に譲れないんだ! もう一度勝負しろ!」
ガイア「男らしく一回勝負って言ったのも君。それに譲れないのは僕も一緒だよ」
シェーン「くっ──ガイア貴様、情の欠片もないのか!」
ガイア「欠片くらいならこの辺に残ってるかも……」
シェーン「ってどの辺だぁ! じゃなくて、本当に本当にこの勝負、俺が負けた事になるのか?」
ガイア「なるのか? って、それが一番自然な流れじゃん。君は負けたんだから」
シェーン「そ、そうか……くっそ! なんて事だ! まさかこの俺があんな事をしなければならないなんてっ──」
ガイア「あはは〜、頑張ってねシェーン君」
シェーン「くぅぅっ! 勝負には負けたが男としては負けてないからな! 待ってやがれ! 寝首をかいてやるからな!」
ガイア「いやそれ、超卑怯じゃん」
シェーン「うおおおぉぉぉ────……っ!!」
ガイア「(変な雄叫び……)」
クリス「おいガイア、今もの凄い勢いで走って行ったのってシェーンか?」
ガイア「あっクリスさん! ええまぁ、チェスで僕に勝てると思ってるのかなぁ、あいつ。僕は子供の頃から……いや、幼児の頃からこういう遊びやってるんだから、勝てる訳無いのに」
クリス「……あいつはたぶん、気にするなと言いたいんじゃないかな」
ガイア「え? 何が?」
クリス「いや、私もよく分からんが……シェーンは勝負にこだわってるんじゃなくてだな」
ガイア「うん、で?」
クリス「いや、もういい。何だかよく分からなくなってきた」
ガイア「最初からじゃんそれっ。クリスさんは本当可愛い人だなぁ」
クリス「──そういう冗談はよせ、あいつを思い出す」
ガイア「あれ、それは良くないね。あんな不真面目教皇、さっさとおさらばしちゃえばいいのに」
クリス「そう言うな。あんな奴でも、今の帝国には絶対に必要な人間だ。それにな、意外に頼りになる……」
ガイア「むぅ〜、面白くない」
クリス「は? どうしたガイア」
ガイア「何でもないですよ〜」
クリス「? それはそうと、今回のチェス勝負では何を争っていたんだ?」
ガイア「拒否権争奪戦」
クリス「何の?」
ガイア「トイレ掃除の罰」
クリス「何中学生みたいな事してるんだ……いや、今時小学生でも無いぞ。で、何をやらかしたんだ?」
ガイア「ガラス割っちゃった」
クリス「はは、やっぱりな、そんな事だろうと思った。それで何処のガラスを割ったんだ?」
ガイア「ヴェーゼンス城メインホールのでっかい色ガラス入り窓。ちなみに10m×2m×5枚で、総額1千万パル」
クリス「──っは!? あの巨大ガラスを──って、何やったらそんな事になるんだっ!? い、いや、それよりもその大惨事でよくトイレ掃除なんかで済んだな……」
ガイア「シェーンに体鍛えたいって言ったら”キャッチ鉛するか”って誘われたから」
クリス「そんな危険な事をするな! 私が罰を下すなら、お前が大車輪を習得するまで鉄棒を握らせる!」
ガイア「何その地味に無理な罰! っていうかね、トイレって言ってもヴェーゼンス城内にあるお手洗い全部だからね。ついでに言うと女子便も」
クリス「城内便所全部!? それ一人でやらせたのか!」
ガイア「だってそういう決まりだもん。僕らの中では」
クリス「はぁ……仲が良いのか悪いのか……いや、これは異常に仲良しなんだな、きっと」
ガイア「うん!」(満面の黒い笑み)
クリス「(うん! って……)」
女官「「「キャアア────」」」
クリス「!? 何だ!? 今の悲鳴は……」
女官「誰か来てぇ──っ! ああっクリス様!」
クリス「何があった!」
女官「お手洗いに行こうと思ったらいきなり男性が──!」
シェーン「ちょっと待てお前ら! 俺はただ掃除を……」
女官「「「いっいやぁぁ──変態来たぁぁ──」」」
シェーン「なぁ────!???」←驚愕
クリス「シェーン、お前馬鹿だろう」
ガイア「元からだけど、やっぱり馬鹿なんだね」
シェーン「五月蝿いぞお前らぁ! 俺は……俺は今まで正統派で通してきたのに……ここに来て”女子便覗き見変態有能軍師”とかって中途半端に誤解を招く様なあだ名をつけられて──」(泣く)
ガイア「大丈夫だよ、シェーン。誰に分からなくても、僕だけは知ってるから。君がとても男らしくて優しいって事をね」
シェーン「ガイア……お前……」
(そして二人はひしと抱き合う)
シェーン「ガイア! 永遠の友よ──!」
ガイア「はははっ、大げさだなあ。礼はダッツでいいよ」(アイスね)
シェーン「ってきっちり取るんかい!」
クリス「(アホらし……)」
守護神達の日常
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「これ、そこの小僧、上手に駒を動かしてみよ」
「ちぇす……? ぼくはできません」
「出来ない? なら覚えろ。ここは暇で暇で仕方が無いんだ。チェスが出来ぬというなら、そうだな、その体で遊んでみるのも面白そうだ……」
「……ぼくは──」
ぼくは、人形じゃない。
あいつらの、きたない手でこわされたくらいで、ぼくはしんだりなんか、しない。
おまえらが言うなら、なんだってやってやるよ。
ぼくは、たいせつなひとがきずつくのを見るのは、もう、いやなんだ────。
(C)LICHT 2008-2-17
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