臆病な心(6章)
6章31話「西の賢人」 1頁の後、朝方のお話。
西国に来て、2日が経った。そう、たったの2日だ。それなのにかなりの時間を過ごした様に思う。それは君の隣にいられる、最後の時だから、か……?
フレアンは重たい瞼を開ける。昨夜の事で少し寝不足だった。一晩中考えても結果は同じ。だが、考えずにはいられない。
――今日でさよなら。コウに何を言えばいいのだろうか。そればかりを考えていた。
部屋を出ると、隣で扉の開く音がした。不意に目をやると、そこには眠そうに目をこするコウがいた。
「珍しいな、君がこんな早くに起きるなんて」
「あ、おはようございます……起きたんじゃなくてトイレです、トイレ」
「二回も言わんでよろしい」
フレアンは溜息を漏らす。それに対しコウは少し口を歪めた。
「いつも言ってますけど、私はとっても朝に弱いんです。フレアンさんと一緒にしないでよね」
コウはぷいっと顔を背ける。そしてそのまま行ってしまった。俺は彼女の小さな背中を見つめたまま、目が離せない。
――言えない。さよなら、なんて、言える筈がない。
「――っは……どこまで臆病なんだ……俺は」
そう嘲笑したのは、明らかに自分自身に対してだった。
[完]
(C)りひと 2008-1-16
前へ←次へ→
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!