摩訶不思議(日常)
西の大魔導士ヘルト。彼は艶やかな長い蒼髪を一つに束ね、青紫の瞳で万人に笑いかける。そんな彼が普段何を考えているのか非常に分かり辛いが、そんな彼も傍仕えのカナリアには勝てなかった。
※ヘルトのキャラ壊れます。
カナリア「ヘルト様、午後から貴族会議が御座います」
ヘルト「ん──今ちょっと無理。代わりに行ってきてくれない?」
カナリア「ご冗談も程ほどに。夜には夕食会も御座いますので、食べ過ぎ飲み過ぎには十分気をつけてください」
ヘルト「えぇ? 夜もあるの? 下らないお喋り会が」
カナリア「唯一他家と交わる大切なお食事会です。服装はこちらで宜しいですか?」
ヘルト「白か……どうせなら黒服着て思いっきり嫌さアピールしようか」
カナリア「はぁ……ヘルト様、真面目にやってください。それに先程から何をやっているのですか?」
ヘルト「よくぞ聞いてくれたね! 今私が作っているこの大発明品は、何と相手の素性を暴いてしまうという、恐ろしく素晴らしい物なのさっ!」
カナリア「また、下らない玩具作りですか。それが一体何の役に立つんです」
ヘルト「ちょっと待っててね……(ガガ──ピーガコガコ……)」
カナリア「…………(はぁ。)」
ヘルト「よし! 出来た! さぁカナリア、ちょっとそこに立ってくれないかぃ?」
カナリア「……畏まりました」
ヘルト「ん、そこでいいよ。じゃあ、測定開始!」
『ピコピコピコ・・・・・・ピコーン! 測定終了。お疲れさまでした』
ヘルト「よし! で、ここから出てきた紙に君の全てが書かれてあるんだよー……ビリビリ」
カナリア「(怪しいというかアホらしい……)」
ヘルト「ほらっ! 見てごらんっ。この紙に──」
カナリア「……”カナリア=ケイスト、女性、25歳、住所ラナース国南地方〇△×番地、学歴ラナース国立大学主席で卒業、後レイドルート家の女中を勤める”……これ、私の履歴書でしょ」
ヘルト「ピンポーン! 大正解! これは相手を認識して、記録させた情報を正しく選んでくれるという優れものさ。一家に一台は絶対必要だね。バカ売れ間違い無し!」
カナリア「喜ばれている所申し訳ありませんが、それくらい覚えて下さい」
ヘルト「……えっ? いやいやだから、情報整理にね」
カナリア「大体、素性の知れた人間しか暴けないじゃないですか、このポンコツ機」
ヘルト「ポッ!? ポンコツだってぇ──!? 綺麗な顔して何て酷い事を……っ」
カナリア「顔形の整い具合で言えば貴方の方が数倍上です。それより時間が無いのでもうその格好で貴族会議に出てください」
ヘルト「ちょっ! この格好って、上下繋がってる黄緑色の作業着で!? 無理無理さすがに着替えさ──」
カナリア「では4秒待ちます。いーち」
ヘルト「えぇ〜!? そんな中途半端な……」
カナリア「にーい、さーん」
ヘルト「分かった分かったから、カナリアごめん悪かったよー!」
カナリア「しーい、はい終了。叫んでばかりで結局時間の無駄でしたね。行きますよ」
ヘルト「えっ襟掴まないで……ってそんな強引に引きずらないで──っ」
カナリア「ヘルト様」
ヘルト「いだだ……はい! 何でしょう!?」
カナリア「オイタが過ぎるとこのカナリア、うっかり本性を見せてしまうかもしれませんので、気をつけてくださいね?」
ヘルト「────はい……」
※カナリアだけは怒らせるな、之ヘルト最期の言葉也。
[完]
サラ「お兄様は昔からカナリアの前では子供っぽくなるのよね。何でかしら」
カナリア「調教は最初が肝心ですよ、サラ様」
サラ「え?」
(C)LICHT 2008-1-26
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