放置プレイ
よ、久しぶりだな。俺は海上商売の帝王と呼ばれている(いません)ユーリックだ。そろそろ覚えてもらえただろうか。
突然だが、今日は俺とコウとフレアンで山へ遊びに行く事になったんだ。何故山なのかは聞かないでくれ。大した理由はないから。
で、山を少し登って平原に辿り着いたところなんだが……ここで一つ問題が発生した。
「うわー! すっごい大きな川」
「こりゃ船がないと渡れねえな」
幅数十メートルくらいの川に差し掛かり、近くに橋も無く、途方に暮れていた俺達。だが、フレアンが何かに気付いた。
「あれを使わせてもらおう」
フレアンが指差した先には、棒に括り付けられた小舟が一つ。
「あ、本当だ! ……でも、この舟二人しか乗れないよ?」
「え? 二人って……――」
――はっ! こ……これは……ここで一人取り残されるという、また可哀相なヤツの話なのか!? いやだ!! もう俺はこれ以上可哀相になりたくな――
「問題ない。先に行った内の一人がここへ戻って来て、もう一人を連れて渡ればいい」
「そっかー、フレアンさん偉い!」
――あれ……? 何か上手くまとまったみたいだな……。(内心ホッ)
「初めに俺とコウが渡る。ユーリックは待っていてくれ」
「ああ、了解」
あーよかった。今回はまともそうだ…。
コウが舟に乗り、フレアンも乗る。コウは小舟に揺られるのが楽しいらしく、異常にはしゃいでいた。少しずつ少しずつ舟は遠ざかり、やがて向こう岸へと辿り着いた。
「あ! フレアンのヤツ、コウの手握りやがった! くっそー、俺が行けばよかった……」
ま、いいか。後で仕返ししてやろう。
――と思っていた俺の視界に、おかしな光景が映った。
小舟から降りたコウとフレアンは、なにやら向こう岸の情景に見惚れている。
――おいおい二人とも、何でこっち見ねえんだ?
コウなんかすっげーはしゃいで……
って先に行きやがった! 本当にあいつはじゃじゃ馬なんだから……
あ、フレアンがこっち見た! そうだよ、俺を忘れんじゃねえよ。早く舟でこっちに渡って……
え? あれ? ちょっ……何その意味深な笑みは……
ってあぁっ! 行くなっ! 行くなよ馬鹿やろう! 今俺見ただろっ!? なぁしっかり目え合っただろ!??
おいっ……俺を置いていくなぁ──ぁ──ぁ──
放置プレイ
まだまだ君の代名詞は他に譲れないよ、ユーリック君。
ユーリック「いやまじで! 今のはありえねぇだろ!?」
[完] 07.12.7
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