商人ユーリックの悲劇 後編
という事を何度か繰り返し、漸くババ抜きも終りが近づいてきた。
コウは残り2枚。ルーンのカードを一枚引いて、1ペア捨てる。これで彼女は残り1枚、そして鳥のもち札も1枚となった。
「ほら鳥、どっちかなー?」
『――――』
ルーンは最後の見極めをしていた。早くしろよなーと思っていると、突然鳥が顔にぶつかってきた。
――バサバサッ!
「いたたっ! 何だってんだ……っ」
ルーンは激しくユーリックの顔を羽で叩いた。もう何がなんだか分からないユーリックは、思わずカードを手前に向ける。
『左のカードだ』
「お前見ただろ!」
『知らん。早く出せ』
鳥は意外に強敵だった。またしても逆らえないユーリックは、素直に左のカードを差し出す。これで鳥は上がりだ。
「ルーンが勝っちゃった! 凄いねっ」
コウは鳥とハイタッチ。あいつ……もしかして天然か? 今の普通おかしいだろうが……。まあ、いいか。ゲームだしな。大人気ない大人気ない。
と、自制したユーリックは、再び強敵を相手にする。
それは勿論残り2枚のカードを持ったフレアン。コウの様子からすると、ジョーカーを持っているのは恐らく彼だ。
「絶対ジョーカーは引かねぇ」
と意気込みながら、2枚のカードを睨む。すると、フレアンは2枚のうち右のカードだけ少し上にずらした。
ま……まさか……これは……伝説の精神攻撃か――っ!?(注:卑怯技)
「くそっ……どっちだ……」
ユーリックは真剣に考える。普通は出した方のカードを取れって意味だよな……じゃあ右がジョーカーで左が安全圏か? いや待て! よく考えてみろ……こいつは裏をかく奴だ。そうに違いない! ということは……
「右のカードもらったぁぁぁっ」
ユーリックは豪快に右のカードを取った。そのカードは……
「あ――――!」
ジョーカー、だった。フレアンは口の端でフッと笑う。
くっ……負けたぜ……。
「はい、コウ」
フレアンは最後のカードをコウに渡す。準優勝が決定し、カードを引いたコウもあがった。
「あはは、ユーリック弱いね」
「ははは……」
『小僧の鍛え方が足りんのだ』
――ってお前がそれ言うかぁー!?
……で、結局のところ、俺も十分遊びに剥きになってた訳で……。
ああ、誰でもいい。
可哀相な俺を助けてくれ――。
[完]07.11.25
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