19話 出発08 「フレアンさん。どこから出るんですか?」 先先と歩いていく青年に追いつくように、少し早足で歩く。歩幅の違いに気付いたフレアンは、申し訳なさそうに謝る。そして速度を私に合わせてくれた。 「えへへへ」 「なんて緩んだ顔してるんだ。遊びに行くんじゃないんだぞ」 「だって……ごめんなさーい」 「……(呑気な奴だな)」 呆れ顔のフレアンだが、嬉しさも少々にじみ出ている。彼だって、これからしばらくはコウと一緒にいられるのだ…気持ちが高ぶるのも頷ける。 『さっきの、一体何者でしょうね』 「そうだな……関係ないとは思うが……まぁ用心するに越した事は無い」 『そうですね。それよりどこへ向かっているんですか?』 「西だ」 抽象的すぎて全く判らない。カルロは話すのが面倒になって、ついに黙ってしまった。ルーンは相変わらず籠のなかでスヤスヤだ。 「ねぇ、地下通路通るの?」 「いや、そこを通ると東側に出てしまう。港町へ行くには逆方向になる」 「あ、そっか。西に何があるの?」 その質問に、彼はどう答えればいいのか迷っている様だ。 「特には……言うならば壁、かな」 「?」 何の事を言ってるの? フレアンさんってたまによく判らなくなる。結構マイペースな人だよなぁ。 そうこうしているうちに、彼の言う「壁」が見えてきた。一言に壁といっても、想像していたのよりかなり高いが。 ざっと5、6メートル。4階建てくらいだ。フレアンは壁の前でピタリと止まる。コウとカルロは彼の後ろに着く。彼はこちらを向いて、一言。 「ここを越えるぞ」 ←前へ|次へ→ [戻る] |