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23話 海戦04*


「ばばあは邪魔だ! ひっこんでろよっ」

 海賊の脅しにも負けず、フェンは私の前に立って微動だにしない。まるで我が子を守る様に……
 海賊の手がフェンに触れ、無造作に体を引っ張り、彼女をまるで物か何かのように扱った。その間に、もう一人の海賊が私の方へ近づいてきた。

 フェンを捕まえた方は、ぶつくさ言いながらも彼女の体を無理矢理倒し、服を破いていく。彼女の悲痛な叫び声が部屋に響く……。

「へへへ、お嬢ちゃん可愛いねぇ」

 私の目の前まで来た海賊は、いやらしい手つきで迫ってくる。それに気付いたフェンはが、恐ろしい剣幕で怒鳴った。

「やめなさいっ! その子に手を出すなら私が……」

「はぁー? おめぇじゃ代わりになんねぇよ、こっちは仕方なく犯してやるってのに」

「やめて――! その子だけはっ…お願バシッ

 あまりに叫ぶので、海賊は彼女の顔をおもいっきり引っぱたいた。口が切れて、端から血を流している。
 ほぼ無抵抗となった女性を襲う海賊。そして、その様子に気をとられていたもう一人の海賊は、自分も早くやりたいと急き、コウの方に向き直る。

 ゴキッッ――

 明らかに顎の骨が数本折れる音がして、海賊は声にならない声で叫んだ。断末魔の叫びに似ている。だが、これくらいで気絶してもらっては困る。それではこちらの気が収まらない。
 私は痛みに悶える海賊の胸座を掴み、力いっぱい拳で殴りつけた。先ほど折れた部分にちょうど当たった為、海賊は目に涙を溜め、口から液体を流しながら叫び続ける。その男の腰から剣を奪い、ゆらりと体をもう一人の海賊の方へ向いた。

「許さない……」

 私は静かにそう呟き、フェンに覆いかぶさる海賊を激しく睨む。楽しみの最中だったその海賊は、コウの存在に気付くのが一瞬遅れた。
 自分の背中に冷たい何かが走り、それが体内に侵入した鉄の温度だということは判ったが、もはや彼にはどうすることも出来ない。

 私は、背中丸出しの海賊に、腹を貫通するまで剣を突き刺し、ぐりぐりと抉った。刺された海賊は、酷い痛みに耐えきれず体を仰け反らせた。

 その瞬間に、フェンはその場から飛び退く。コウは勢いよく剣を引き抜き、鮮血を浴びぬ様に咄嗟に避けた。頬に血しぶきが数滴かかる。

 内臓を抉られたその海賊は、やがて息をしなくなり、ただ止むことなく血が流れていた。

 片手で頬を拭い、剣を持ったまま呆然と立ちすくむ。

 初めて人を……
 殺した。



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あきゅろす。
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