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22話 海の住人02


「気持ちいい風……海ってこんなに穏やかなんだ……」

 コウは甲板へ上り、手すりにもたれ掛かる。海賊船にいたときとは正反対の穏やかさ……。
 目を瞑ると波の音が周りを包む。
 慣れない潮風は肌に痛いが、それよりもこの憂鬱な心を洗ってくれるような気がしてしまう。

 視界に広がる水平線が少し湾曲して見えるのは、気のせいではないだろう。
 ユーリックの部屋には地球儀があった。あれは世界を丸く表しており、この世界の人間は海の果てが必ず陸であると知っている。
 それは海の歴史が進んでいるということなのだろうか……。

 何故、こんなことを覚えているのだろう。記憶の一部を失くしても、常識的なものは覚えている。
 自分でも不思議な感覚だ。

 コウは手すりに背を向け、もたれたままズルズルと下にしゃがみ、座り込んだ。
 片膝を立て、そこに腕を休めて、すっかりくつろぎ態勢だ。

 きゃーきゃーっ
 こっちこっち!早く来いよー!

 甲板では子供達がなにやら楽しそうに遊んでいる。ここの商人達の子供だろう。
 大人が仕事をしている間、こうやって子供らだけで遊ぶ。

 普通の家族と何一つ変わらない。海の上でも陸地でも、生活は一変するかもしれないが、基本的には変わらない。
 しいて言うなら、海に落ちたりしたら大変ってところか。

 ドポンッ…!

「……え?」

 今、水が叩きつけられるような音、しなかった?

 コウは体を起こし、辺りの様子を伺う。先ほどの子供達は泣き喚いて、何を言っているのかよくわからない。
 すぐに大人たちが駆けつけて、騒ぎは一層激しさを増した。


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